ぜんぶぜんぶあいしてる | ナノ



なんて天国だ、そう思いながら私はクーラーのよく効いた部屋でごろごろしながら雑誌を読んでいた。なんだかアイスが食べたくなってきた。この状態でうんと冷たいアイスを食べるなんて幸せすぎる。私の幸せって何だか安いなあ。でももうすぐ晩御飯だしなー・・・あ、晩御飯もアイスも食べればいいだけの話か。そうとなったら今頃キッチンで晩御飯の用意をしているであろう士郎にアイスを取ってと頼まなきゃ。そう思って士郎の名前を呼ぼうとしたとき、士郎の悲鳴が聞こえた。何事だ?


「うわああ!!!」
「士郎?どうしたのー?」
「やだやだ、こっち来ないで!!」

どうしたのかなと重い腰を持ち上げてキッチンを覗くとがばり、士郎が抱き着いてきた。可愛いな

「どうしたの」
「あ、あれ・・・・・」

士郎が指差す方向を見ると、そこには全人類の敵であるヤツがいた。所謂ゴキブリというやつ。ヤツはかなり強い。何より気持ち悪い。視覚的にも精神的にも。

「あわわ、ちょ、なんでこんなとこに!!!」
「何あれ、何なのあれ!」
「士郎知らないの?」
「北海道にはあんなの居なかったよ!?」
「うわ羨ましい!!てかどうしようあれ、あたしヤツ無理!!!」
「晩御飯作れない・・・・・」
「・・・・・・仕方ない、染岡呼ぶか」
「え、染岡くん呼ぶの・・・・?」
「だって私も士郎もヤツ無理でしよ」
「・・・・・僕がやる」
「え?」
「僕がやるから、染岡くんはいらないよ!!」

士郎は何を思ったか近くにあった新聞紙をくるくると丸めてぎゅうと手に持った。

「ちょ、無理しないでよ」
「無理じゃないよ!!僕が君を守りたいんだ」
「士郎・・・・・」
「行くよ!!てぇい!!!」


バシッ


「・・・・・やった、やったよ!!僕はやれたよ!!!!」
「士郎!!!ありがとう!!大好き!!!!」
「はぁ・・・・」
「でも何で急に?」
「だって、君が染岡くんに頼るなんて嫌だったんだもん」
「士郎、私はヤツが苦手でも士郎を愛してるよ?」
「僕が嫌だっただけ」
「ありがとう士郎」
「・・・・・どういたしまして」
「だけどね、士郎。私はどんな士郎だって愛してるんだよ?だから、無理はしちゃだめだよ」
「・・・・・・うん、ありがとう」
「士郎大好き」
「僕も君が大好き」



どんな君だって君ということに変わりはない




0912 吹雪
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