シュガーシュガー魔法の呪文 | ナノ



ふわふわゆらゆら、今の私の心はヒロトくんのことで揺れている。ついこの間出会ったヒロトくんはなんとびっくり、魔法使いなのだ。ヒロトくんに出会ったのは私が一人きりでブランコに乗っているときだった。ぎいぎいとブランコが揺れる度に耳障りな錆び付いたような音が辺りに響いて嫌でも私がひとりぼっちだと認識してしまう。私は友達というものが居なかった。私は魔法を信じていた。毎日毎日魔法のお勉強をしていた。そんな私を、みんなが変な子だから近付くなと言って酷い扱いをした。魔法は本当にあるんだよ、寂しくてこぼれ落ちそうな涙をぐっとこらえる。ブランコは私と同じ気持ちなのか、まだ寂しげに鳴いていた。俯いて地面を見ると蝶が一匹死んでいた。孤独に死ぬなんて、かわいそう。私もそうなるのかな。

不意に落ちていた蝶の上に影が差した。前を向くと赤い髪の男の子が立っていて、その綺麗な翡翠色の瞳でじっとこちらを見ている。吸い込まれそうなくらい綺麗な翡翠色に見とれていたら男の子が口を開く。


「どうしてそんな泣きそうな顔してるの」
「ひとりぼっちは嫌なの」
「蝶のこと?」
「蝶も私も」
「じゃあこの蝶が生き返ったら君は笑ってくれる?」
「生き返らないよ」
「生き返るよ、僕は魔法使いだから」

そう言って男の子は蝶を指差した。すると蝶はみるみる息を吹き返した。ひらひらと蝶が私の目の前を飛ぶ。それから、ふらりとどこからか別の蝶が飛んできて二匹で青い空の向こうへ消えた。一瞬の出来事だった。


「ね、言ったでしょ?」
「・・・す、ごい」
「僕は魔法使いだから」

だから君にも魔法をかけてあげる、そう言って男の子は私にそっと手を差し出した。私がきょとんとしていると男の子はその手で私の、膝の上に置かれていた手をぎゅっと握って微笑んだ。


「僕はヒロトっていうんだ」
「ヒロト、くん?」
「そう。君と僕は今から友達だよ」
「友達になってくれるの?」
「だからもう君はひとりぼっちじゃないよ」


その言葉を聞いた私の目からは涙が溢れ出した。ヒロトくんが少し困った顔をして笑ってほしいなと言ったから、私は涙でぐしゃぐしゃであろう顔で精一杯に笑ってやった。なぜだか胸のあたりが暖かいような、甘いような、とにかく心地好い気分になった。ふと、私はヒロトくんに恋をしてしまったのかもと考えるとまた胸がほんわり甘くなった気がした。多分ヒロトくんは私が笑う魔法をかけるのと一緒に恋をする魔法もかけちゃったんだろう。私につられてヒロトくんも笑った。











0905 基山
 企画くちびるに魔法に提出



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