恋心なんて知らないよ | ナノ



「私にお弁当作って」
「はい?」

何がと聞き返すと風介はもう一度私にお弁当を作ってと言った。お弁当?何で?

「え、何で?」
「何ででも」
「というか何で私?」
「別にどうだっていいでしょ」
「えー」
「文句あるの」

風介にギロリと睨まれて私は仕方なく首を縦に振る。風介はほんとわがままだなあ。風介は明日忘れたらどうなるか分かってるよね?なんて脅迫紛いな台詞を吐いてどこかへ歩いて行ってしまった。ほんと、どこのジャイアンなんだってくらいにわがままだ。昔からだから慣れちゃったけれど。



次の日私は自分の分と風介の分のお弁当を持って来た。風介は本当に作ってきたの、と言った。風介が作れって言ったじゃないか!と言い返してやろうと思ったけど私からお弁当を受け取る風介がどこか嬉しそうだったから止めた。二人で私の作ったお弁当を持って屋上に行くと、既にそこにはヒロトと晴也がいた。晴也はいつも昼食がパンな風介がお弁当を持っていることに興味津々だった。ヒロトは微笑むだけで何も言わなかった。


「風介、何で今日は弁当なんだよ」
「そういう気分だからだ」
「自分で作ったのか?」
「いや、こいつに作って貰った」
「うわ、ずりぃ!!俺にも作ってくれよ!!!」
「別にいいけど・・・・」
「やりぃ!!!」
「ダメだ」
「は?何で風介がダメだなんて言うんだよ」
「こいつは私にしかお弁当作らない」
「なんでだよ!!」
「何ででもだ」


風介はそれっきりだんまりで、晴也はまだ騒いでいる。風介はだまったまま私のお弁当を開けた。

「案外普通だね」
「普通で悪い?」
「料理なんて出来ないと思っていたから」
「失礼すぎる」
「気にするな。いただきます」

風介が私のお弁当を口に運ぶ。何故だかかなりドキドキする。

「どう・・・・?」
「・・・・まずい」
「え、うそ」
「嘘、おいしいよ」
「よかったあ!!!!」

それから風介は私のお弁当を空にしてから、小さく私にありがとうと言ってそっぽを向いてしまった。風介が喜んでくれるならまた作ろうかな、と思った。


「また作ってね」
「・・・・うん」
「なあ?俺には?」
「晴也は黙ってて」
「ひでぇ!!」
「空気読みなよ晴也」
「つーかヒロト随分大人しかったな」
「僕は空気読むタイプだからね」


ヒロトが私に向かって微笑んだ。私と晴也はまったく訳が分からなくて頭を捻ったけど、からっぽの頭ではヒロトの微笑みの理由を考えるのは無理だった。ヒロトは意味ありげにいつか分かるよ、と言って自分のお弁当の最後の一口をぱくりと食べた。




0831 涼野

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