つんつん佐久間 | ナノ



「もうだめむり!!」

私の情けない声がふたりぼっち教室に響いて消える。すぐ隣で佐久間がため息を吐いた。

「お前なぁ、さっきから何回も言ってるだろ!!ここがこれを通るからこの値をここに代入なんだよ!!!」
「だからなんで通るのよ」
「お前ちゃんと授業聞けよ」
「聞いても分からないから佐久間に聞いてるの」
「辺見でももっと物分かりいいぞ」
「前のテストは辺見に勝ったもん」
「たかが3点差だろ」
「うっ・・・・・」


佐久間は言うことがいちいち酷いと思う。分からないから聞いてるのにわざわざ馬鹿だとか小学校からやり直せだとか・・・・・源田ならもっと優しく丁寧に教えてくれるんだろーなぁ


「じゃあ源田に教えて貰え」
「ちょ!帰ろうとしないでぇ!!佐久間に教えて欲しいの!!」
「・・・・・チッ」


佐久間は小さく舌打ちをしてからまた元のように、わたしの机の隣までわざわざ持ってきた誰かの椅子にどかりと座った。何だかんだ言って優しい、それが佐久間の良さだと思う。佐久間はもう一度ため息を吐いた。

「ったく、俺も暇じゃないんだからな」
「佐久間暇人じゃん」
「馬鹿だろ、俺は鬼道さんに電話かけたりメール送ったりしなきゃならねぇんだよ」
「鬼道可哀相」
「何か言ったか」
「何もありません」
「まぁいい、じゃあ今のを応用してこれやってみろよ」
「が、頑張る」
「出来なかったらアイス奢れよ」
「やだ!!・・・・・こう?」
「あー、惜しいなぁ」
「え、嘘」


ちょっとシャーペン貸せ、そう言って佐久間は私の手からシャーペンを奪っていった。シャーペンを渡すときにほんの少しだけ触れ合った指先がじんわり熱を持つのがわかった。その指先の熱に倣って顔が熱くなる。熱を孕んだ指先を見つめていると急に佐久間の声が聞こえた。


「おい、聞いてるのかよ」
「え、あ・・・・・・・」
「・・・お前やる気ねぇだろ」
「・・・・・・・ごめんなさい」


佐久間がうんざりとした風にため息をついて、シャーペンを机に置いた。冷たくて綺麗なその瞳で私をじっと見ている。佐久間の目線に責められている気がして、私はぎゅうと目をつぶる。嫌われちゃったかもしれない。嫌だ、佐久間にだけは嫌われたくない。不意に頭が撫でられる感触がして、そっと目を開ける。さっきとは違う、申し訳なさそうな佐久間の顔が見える。


「・・・・ごめん、言い過ぎた」
「・・・・・佐久間、ごめんなさい」
「もういい」

だから、そんな泣きそうな顔すんな。佐久間が少し笑いながら私の頭を撫でる。佐久間が少しでも笑うと私も嬉しくなるから、不思議。私の感情は佐久間によって左右されるらしい。なんて単純な奴なんだろう。でも、それだけ佐久間が好きってことだと思う。


「勉強終わったらアイス買ってきてやる」
「ううん、私も一緒に行く」
「・・・・・・そうか」
「だからね、佐久間」



絶対きらいにならないでね。



「・・・・・当たり前だろ」




0908 佐久間

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