結局流される | ナノ



ねぇ、先輩?ヒロトくんの綺麗な声が私と彼以外誰も居ない教室に響いた。私を机の上に押しつけているヒロトくんの赤い髪がさらりと揺れる。その綺麗で澄んだ緑色の瞳にじっと見つめられて、私の惨めなくらい小さくて弱い心臓は普段より幾分速い動きをしながら私を生かしている。

彼は全てが綺麗だと思う。赤くてさらさらと指通りのいい髪だとか宝石みたいにきらきらしてる瞳、怖いくらいに白くて触れたら壊れちゃうんじゃないかってぐらいに透き通っている肌。全てが私にとっては綺麗で素敵なもので、ヒロトくんの全てが私を掴んで離してくれない。

先輩、何考えてるんですか?今は僕の事だけ考えてくださいよ。ねぇヒロトくん、私はいつでも君のことしか考えてないよ?どんな格好をすればヒロトくんが喜んでくれるかな。どんな話し方をすればヒロトくんが喜んでくれるかな。全部ヒロトくんの為に考えて行動してるの。ヒロトくんは先輩を僕でいっぱいにしたいなんて言うけれど、私は既にヒロトくんでいっぱいでもう他に何も入る隙間なんてないのよ?それなのにヒロトくんはもっともっと僕でいっぱいにして先輩を壊しちゃいたい、なんて言う。私はいつでも君で溢れかえって壊れちゃいそうなのにね。やっぱりヒロトくんに壊されるのが一番だなぁ。そこまで考えたときにヒロトくんは強引に私の唇に噛み付いた。ぬるりとヒロトくんの柔らかい舌が咥内を舐めていく。ヒロトくんの舌が私の舌を絡めとろうとしてきたから私はヒロトくんから少しだけ逃げてみる。でもヒロトくんはやっぱりすぐに私に追いついて、私を絡めとってしまった。

だんだんと私の中の酸素が足りなくなってきて、ヒロトくんの胸をそっと押す。ヒロトくんが口を離すと私とヒロトくんの間に名残惜しいとでもいうように銀色の糸がひいた。私がどちらのともつかない唾液を飲み込むと、ヒロトくんは満足そうに笑って自分の唇についた唾液をぺろりと舐めた。ねぇ先輩、いいでしょ?再びヒロトくんが問い掛ける。答えなんか分かってるくせにね。私が頷くと同時にヒロトくんの綺麗な唇は奥から赤い舌を覗かせながら弧を描いた。




0725 基山

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