理由は全て好きだから | ナノ



お昼ご飯を食べた後の授業はとても眠い上につまらなくて、数学の問題を解くべきなのに頭は靄がかかったようにぼーっとしていた。ちらりと窓の外を見ると隣の校舎の屋上で薄銀色が見えた。私が気分が悪いので保健室へ行ってくると告げると、つまらない授業をしている先生はすんなりと許してくれた。これほどつまらない授業をしている先生に感謝したことはないだろう。


屋上に続く立入禁止と貼ってある扉をあけると私の横をふわりと風が吹き抜けて、扉の向こうには予想通りの人が居た。

「ダイゴ先生」
「あぁ、君か。ここは立入禁止だよ?」
「先生こそ立ち入ってるじゃないですか」
「先生だからいいんだよ。それに君は本来なら授業を受けている時間だよ」
「ダイゴ先生が見えたから来ちゃいました」
「しょうがないなぁ」

今日だけだからね、そう言ってダイゴ先生は私の髪をくしゃりと撫でた。先生それ前も言ってましたよね?さぁ、どうだったかな。なんて言う先生は何だかんだ言ってきっと次も許してくれるんだろうなぁ、だなんて頭の隅でぼんやり思った。


「それよりさ、授業サボるんなら僕の相手してよ」
「いいですよ、喜んで」
「いいんだ」
「だってダイゴ先生のこと好きですし」
「ほんっと君って僕のこと好きだよね」
「お互い様じゃないですか」
「・・・・・へぇ、気付いてたんだ」
「もちろんです。ダイゴ先生のこと好きですから」
「僕は好きじゃなくて愛してるけどね」
「先生、クサいです」
「そうかな?想いを伝えるにはこれくらいの言葉がちょうどいいと思うんだけどな」
「言葉だけで想いは伝わりませんよ。行動も伴わないと」
「あぁ、こういうこと?」
「・・・・・・・まぁ、これでいいです」
「素直なのかそうじゃないのか。最初からキスしてって言えばいいのに」
「言えませんよ、そんなこと」
「君は本当に可愛いね」
「うるさいです」




1023 ダイゴ

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