わたしのヒーローだったり | ナノ



私が初めてそれに恐怖を抱いたのは、恐らく幼稚園にいた頃だっただろう。生まれたときから一緒にいるような幼なじみの風丸と二人で公園で遊んでいたときだった。一匹の野良犬が公園に入ってきた。野良犬は私達を見て一目散にこちらへ駆けてきて、私に飛び付いた。多分野良犬はじゃれついただけなのだろうが体の小さな幼稚園児の私にはとても大きく見えた。私は怖くて泣いてしまった。そのときは風丸が助けてくれたからよかったけど、それから私は犬というものがどうにも好きになれなかった。それから今まで何度も犬に会うことがあった。風丸と散歩していて気が付くとすぐ傍に犬が嬉しそうに尾を振りながら歩いていたりした。その度に私は風丸に抱き着いたり追い払ってもらったりしてどうにかしてきた。風丸いわく犬に好かれる犬嫌いらしい。犬に好かれたって嬉しくない!



「うあー犬無理犬無理」
「そんなに怖がることか?」
「だってぇー!」
「一回だけでも触ってみろよ、可愛いぞ?」

私は今風丸に連れられてペットショップに居る。何故犬嫌いの私がペットショップなんかに居るのかというと風丸に引っ張って連れてこられたから。風丸はいい加減犬嫌い直した方がいいんじゃないか?なんて言うけど直さなくていい!だけど子犬なら大丈夫、怖くないよと風丸は言って私をペットショップに引っ張っり込んだ。生き物と戯れる風丸はとっても可愛い・・・・・・・その生き物が忌まわしき犬でなければ。

「子犬だから噛まないぞ?」
「そーゆー問題じゃなぁい!」
「でもいい加減直さないと、俺はいつまでもお前の側で犬追い払ってやれないんだから」
「うー無理ー!」
「子犬にだけ慣れよう!そうしたら子犬以外の犬からはお前をずっと守ってやるから、な?」
「・・・・・ほんと?」
「ああ!」

風丸がいい笑顔で頷くものだから、私は恐る恐る風丸が抱いている子犬に手を伸ばす。そして私の手は子犬に触れた。すぐ引っ込めたけど私の手は確かに犬に触れた。風丸はふんわり笑って、偉いじゃないかと言ってくれた。何だか胸がほんわり暖かくなった。風丸が笑ってくれるなら犬を好きになるのも悪くないかも、とか思った。だけど私は風丸に守ってもらうのが好きだからやっぱり犬嫌いのままがいいかも、そう風丸に言うと風丸はやんわり笑いながらお前がそれを望むならって言ってくれた。やっぱり私のヒーローは風丸だけだ。




0822 風丸

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