全部愛してあげる | ナノ



※ほんの少しだけDV
※過去捏造



ねぇ、僕は君が大好きなんだよ。好きで好きで好きで好きで、どうしようもないくらいなんだ。僕は君を愛してる。愛しているんだ。君も僕を愛してるって言ったよね?だったらどうして逃げるの、ねぇ


ぱぁん、と音が響いた。彼女の白い頬が片方だけ腫れていて、なんだか所有印みたいだなんて思った。彼女は手で頬を押さえて、僕を見た。その瞳には明らかな恐怖とか軽蔑とか、色んなものが混じっていて、それが僕を苛立たせる。どうしてそんな目で僕を見るの?君は僕をあいしてるんでしょ?


「ど、して」
「どうして?」
「どうして、殴るの?」
「殴る?殴ってなんかいないよ。僕は君が好きだからこんなことするんだよ」
「好きならこんなこと、しないよ」
「でも父さんはこうして愛してくれたよ」

父さんはいつもこうして愛してくれていた。僕は父さんに愛されるだけで十分だった。だから僕は勉強もサッカーも、ぜんぶぜんぶ頑張った。そうすれば父さんが愛してくれるから。


「これは愛なんかじゃない、よ」
「愛だよ」
「違うよ、これは憎しみだよ」
「違う、違う」
「ヒロト」
「違う!!!!!」
「ヒロトは愛し方を間違えているんだよ」


そんなはずはないんだ。だって、だって父さんは僕をこうして愛してくれたのに。じゃあ彼女がいうとおり、これが憎しみだと言うなら僕は父さんに憎まれていたってこと?違う、違う違う違う!!!!そんなのありえない!!!!父さんは僕をたしかにあいしてくれたんだ。だって、父さんに愛されない僕に価値なんて、生きてる意味なんてなくなるから。


「僕は間違ってなんかいないよ。父さんに愛されない僕なんか居ないから、だから」
「ヒロト」

彼女に名前を呼ばれたと思えば、ふんわりと抱きしめられた。

「ヒロトが愛し方を知らないなら、私が教えてあげる。愛されないヒロトに価値がないなら私が愛してあげる」



そう言って僕を抱きしめる彼女からは心地好い体温と鼓動が伝わってきて、何故だか無性に泣きたくなった。




0813 基山

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