どきどきしちゃう | ナノ



ない、どこを探してもない。鞄の中も机の中も、後ろのロッカーの中も探した。だけど見つからない。どうしてだろう、ちゃんと入れた気がするのに。教科書、家に忘れたのかなぁ。自分の席で小さく溜息を吐く。風介にでも借りに行こう、そう思って立ち上がった瞬間になったチャイムは全く空気を読んでいない。読む気もないんだろう。私は大人しく椅子に座った。私の席は窓際な訳で、教科書を忘れたら見せて貰える人は右隣の人だけだ。喜んでいいのか悲しむべきなのか、私の右隣は基山ヒロトくんという美少年だ。しょうがない、腹を括ろう。


「基山くん、私教科書忘れたんだ。見せてくれないかな?」
「君が教科書忘れるなんて珍しいね」
「入れたと思ったのに入ってなかったの」

基山くんはいいよ、見せてあげる。と言ってくれた。しかもにっこり微笑んで。やっぱり美少年は違うなぁ。笑顔だけでも凡人との差は歴然だ。もちろん凡人とは私のことである。二人で机をくっつけていざ授業、と思ったのだけどやっぱり授業は面白くなくて、私はそっと目を閉じて意識を手放したのだった。ごめんね、基山くん。



誰かに髪を撫でられている感触がして私が目を開けるとそこには綺麗な基山くんの顔があった。あれ、何で顔があるんだ?

「き、基山くん!?」
「おはよう」
「えっ、と」
「よく眠れた?」
「う、あ、はい」
「それならよかった」

さっきまで私を覗きこんでいた基山くんがくすくすと笑った。私はふと今何時なのかと思って時計を見るとそれは4時半を指していた。おかしい、授業は3時に終わるはずだ。寝ていた私は分かるけど、何故基山くんがいるんだ。


「基山くん何で居るの?」
「君が気持ち良さそうに寝てるの、起こしたら悪いかなぁって思ったから」
「放置してくれて良かったのに・・・・」
「それに可愛い君の寝顔見てたかったし」
「か、可愛い!?」
「すっごく可愛かったよ。普段から可愛い子だなって思ってたけど寝顔まで可愛いなんて」
「可愛くないよ!!!」
「大丈夫、すっごく可愛いから!!あっ、一緒に帰ろ?」
「え、あ、うん」


席を立って二人並んで教室から出るとき、ふわりと手を繋がれた。

「ひゃっ、き、基山くん?」
「ヒロト」
「へ?」
「ヒロトって呼んでよ」
「・・・・・・・ヒロト・・・・くん」
「まぁそれでいいよ。じゃあ行こうか」


多分私は今すごく真っ赤なんだろう。真っ赤っかの私にヒロトくんはとびきり素敵な顔を向けてまた笑った。




0825 基山

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -