いとしいとしとおもふこころ | ナノ


い、たい、いたいいたいいたいいたい、イタい、私の身体が悲鳴を上げる。もう駄目だと叫ぶ。その痛みを全部無視して私は私の対アクマ武器である"声"を使ってその場のアクマ達を消す、消し去る、それしか私に出来ることはないから。全てのアクマが居なくなって、攻撃を止めた私の口からごぽりと血が溢れ出す。ガクリと力が抜けた私の身体を誰かが受け止めてくれた。この優しい暖かさは見なくても誰だかなんてすぐに分かる。

「・・・ユウ」
「・・・お前、寝床抜け出してこんな所で何してるんだよ」
「えっと、お散歩?」
「散歩でその怪我か」
「すいませんアクマ破壊してました」

へにゃりと笑った私を見てユウは眉間のシワを更に深くした。そんなにシワ寄せてるととれなくなっちゃうよ。そんな顔させてるの、私なのにね。

「・・・・ごめんなさい」
「・・・・・死んでねぇから許してやるよ」
「ごめんなさいユウ、これからはユウにも声かけてからにする」
「初めからそうしろ」

ユウは私の身体をひょいと抱えて夜空を飛ぶ。私は黙ってユウに抱えられる。私を苦しめているイノセンスは今も私の身体を蝕み続ける。私のイノセンスは特殊だった。私の喉に宿ったそれは発動させるたびに私の身体を蝕んでいく。そうして私は身体の細胞を壊されて、最後には私が死んじゃって終わり。それだけの話。じゃあ戦わなければ、イノセンスを発動しなければいいじゃないかって話だけど上がそれを許すわけもなく私は今日もこうして世界に身体を捧げるのだ。徐々にイノセンス化してる私の身体はアクマの気配に敏感で、アクマを感知する度に喉に痛みを走らせる。早くアクマを壊せと言うように。それが私達エクソシストの役割であるから。だけど私が戦い続ける理由はそんなものじゃない。私にも仲間が居る。私を心配してくれる仲間が居る。それを守る為に私は戦っている。いつも危ない時に真っ先に駆け付けてくれるユウやきらきらの笑顔で話し掛けてくれるアレンくん、いつも楽しい話で笑顔にさせてくれるラビにふわふわ可憐で可愛いリナリーやリナリーが大好きなコムイさん。他にも、たくさん。私は私の世界の為に戦うの。私の大切な仲間が消えちゃわないように。守る為に。そんな決意とは裏腹に私の身体は蝕まれる。拒みたくても拒めない絶対的なチカラ。それを使わなければ守れない、だけど使えば自分がしぬ。自分の命と大切な仲間、どっちが大切かなんて考えなくても分かる。私はぶっきらぼうな優しさだとかきらきらな笑顔だとかを守りたい。だから私は戦う。身体が動かなくなるまで。少しでも仲間の負担を軽くする為。だけど私の身体はそれについて来られないみたい。だって、ホラ

「・・・・ぐ・・がはっ」
「・・ッなまえ!?」
「だい、じょぶ・・・・だ・・・・か・・・」
「大丈夫な訳あるかよ!!」
「も・・少し・・・み、んな・・・を・・・・」
「オイ!!バカ、喋るんじゃねぇよ!!!」
「まも、りたかった・・・・なぁ・・・・」

ああ、もう世界が霞んでるよ。涙のせいなのか、ただ目が見えなくなったのかは分からない。だけどすぐ近くにあるはずの大好きなあなたの顔が、霞んでしまって見えないの。何て使い物にならない身体なんだろう。ただただ壊されていく自分に腹が立った。ねぇ、かみさまかみさま、どうかお願い。もしあなたが居るならば私の大切なみんなを、私の大切なユウを、ずっとずっと守ってね。



0106 神田


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