いとしいとしとおもふこころ | ナノ


ミストレくんはこの学園でもモテモテな女の子みたいに可愛くて綺麗な男の子だ。そんなミストレくんにチョコをあげようと、大それたことを考えたわたしは前日に出来るだけ美味しく出来るだけ綺麗なものに仕上がるように努力して、やっとのことで完成したチョコレートケーキを崩さないように鞄に入れて朝からの訓練へ向かった。朝の訓練を終えてシャワーを浴びて、鞄の中のケーキを確認。うん、崩れてない。少しだけ幸せな気分になったわたしは早速ミストレくんにチョコケーキを渡そうと、それが入った紙袋を持ってミストレくんのクラスへ向かった。ミストレくんのクラスの扉を開いたその先には、予想していた光景が広がっていた。山のように積まれたチョコとミストレくん、その周りにたくさんのチョコを持った女の子達。ミストレくんはそれらを笑顔で受け取っている。周りの女の子や積まれたチョコはわたしのものとは比べものにならないくらいに素敵で豪華で可愛らしいものばかりで、なんだかこんなチョコケーキを渡すのが申し訳なくなってきた。もう、渡すのやめておこうかな。このチョコケーキはお友達のエスカバくんにでもあげよう、そう思ってもう一度ミストレくんを見るとばちりと視線が交わった。ミストレくん、笑ってた。何だかいたたまれなくなったわたしはくるりと体を反転させて教室を出ようとしたけど、誰かに腕を捕まれてそれは阻止される。誰なんだ、わたしの肉たっぷりの腕を掴んだのは。顔だけを後ろに向けて腕を掴んだ主を見て、わたしはびっくり。だって、そこにいたのはミストレくんだったから。

「ねぇ君、ちょっといい?」
「あ、え?わ、わたしですか??」
「君以外誰が居るの」
「あ、はい、全然大丈夫です!!」

それを聞くとミストレくんはそう、じゃあついてきて。とふんわり笑ってわたしの腕を引いてクラスを出た。後ろではミストレくんの親衛隊の女の子達がきゃーきゃー悲鳴をあげている。あれ、わたし殺されるんじゃあないかしら。ミストレくんに黙ってついていくと、ミストレくんは近くにあった空き部屋にわたしを連れて入った。あのミストレくんがわたしに何の用なんだろうか。

「ねぇ」
「は、はい」
「君の持ってるのって、俺に渡すものだったりしないの?」
「はい、そうです!!」
「じゃあ何で渡さないで出ていこうとしたの」
「えっと、それは・・・・」
「ねぇ、何で?」

ミストレくんの綺麗な目がわたしを見ている、そう考えただけでわたしの顔は熱を帯び始める。なんて弱虫なんだ、わたし。

「他の女の子のチョコを見ていたら、何だかこんなものを渡すのが申し訳なくなって・・・」
「ふぅん」
「だからやめようかなぁ、なんて」
「俺は、君のチョコ欲しいよ」
「ふぇ、なんでですか?」
「言わなきゃ分からないの?俺は自分の本命以外は自ら取りに行くなんてしないよ。他の子はみんな勝手に持ってくるから」
「えっと、それって・・・どういう意味、かな?」
「っ・・・!!そこまで言わなきゃ分からないの!?」

ミストレくんはぷいっと顔を逸らして君が好きだってこと!!と言った。ミストレくんの綺麗な髪から覗く耳はほんのり赤く染まっていた。わたしもなんだか恥ずかしくなって、下を向いたままミストレくんにチョコを差し出す。ミストレくんはそれを受け取ってからじぃっとわたしを見た。

「ど、どうしたんですか?」
「で、どうなの」
「へぇ??」
「ねぇ、君どこまで鈍感なの」

さっきの返事だよ、そう言われてわたしはさっきミストレくんに好きだと言われたことを思い出してなんだか恥ずかしくなった。でも気持ち、ちゃんと伝えなきゃ。

「・・・・わたしもミストレくんが、好きだよ」
「じゃあ、今日から君は俺の彼女だ」

ミストレくんはへにゃりと笑って、わたしもつられてへにゃりと笑った。




0214 ミストレ


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