池袋の夜。とある公園の一角。 いつもより少し肌寒い夜だったが、あの2人には丁度良かった。 平和島静雄と折原臨也は今夜もまたいつものように、殺し合いを行っていたのだから。 「臨也君よお…そろそろ世の中の為に死のうとか思わないか?」 「ハハハッシズちゃん面白いこと言うねえ…でも生憎、俺はまだまだ人間を見ていたいから。言ってるでしょ?俺はシズちゃん以外の全人類を愛しているし、だからこそ長生きしてずっと人間を見ていたいわけ…おっと!」 自販機が空を飛ぶ。そんな非現実的な事誰が信じるだろうか、でも実際この男は自販機を投げ飛ばす。臨也はそれをジャンプしてひょいっとかわし、そのまま階段の手すりに着地した。普通の人間なら落ちても可笑しくないのに、いや、絶対に落ちるであろうそんな場所に、臨也は簡単に着地するのだ。並ならぬ運動能力である。 「やだなーシズちゃん、ちゃんと人の話は最後まで聞きなさいって教わらなかったー?」 「うぜえ」 ハハッと笑った後、いつも通りに言葉をつむぐ…筈だった。 「あれっ」 静雄でさえ理解できなかった、あの臨也が足を滑らせたのだ。ココがもし、塀の上だったらドジを踏んだと思えば愛嬌が沸くだろう、静雄の場合なら大笑いをするか、馬鹿にするだけで終わると思う。でも臨也がついさっきまで立っていたのは階段の手すりで、しかも運のないことに臨也は下へと堕ちて行く。電灯から照らされてたはずの臨也の姿はもう無い。 「臨也!!!!!!!」 静雄には分からない、何故自分が殺したいほど憎い相手の名前を叫んだのか。静雄にはわからない、何故自分が殺したいほど憎い相手に手を伸ばしてるのか。静雄には分からない、何故自分が殺したいほど憎い相手に向かって飛び降りたのか。静雄には分からない、何故自分が殺したいほど憎い相手を抱きしめたのか。 そして、当人達には分からない、自分達が殺したいほど憎い感情の裏返しを。 「いってー…」 階段の一番上から落ちて、「いってー…」で済むのはきっと世界中さがしても静雄だけだろう。腕の中を確認する。暗くて良く見えないが、おそらく驚いたような顔をして静雄をみる臨也の顔。 「おい、大丈夫か…」 「はっ…?シズちゃん、何俺を、大嫌いな俺を助けてるわけ?ついに頭までイっちゃった?」 静雄が反論する前にナイフが突き出されて、臨也は静雄から離れた。 そして口から出た言葉、 「人間ぶるなよ化け物が。」 折角人助けをしたというのにこんなことをいわれるのか。 「萎えちゃったからもう今日は帰るね」とだけ言い残し臨也は早々に夜の中に飲み込まれていった。 そんな夜の街の中、彼は一言言葉を吐き出した。 「だからシズちゃんが嫌いなんだ」 風が冷たかったから、ぬくいような気がしただけ (化け物の、ぬくさなんて、要らない、) 拝借。*しるかぎりのことばを http://homepage3.nifty.com/azoth/f/index.html |