鰐塚処理は阿久根高貴が好きなのだが、そもそも彼女が好きになった阿久根は中学生の頃の破壊臣・阿久根高貴だ。だから鰐塚は最初こそ、すっかり丸くなってしまった阿久根に幻滅した。しかしそのあとの阿久根の姿に次第に好意を取り戻した。(具体的にはお嫁さんになりたいくらいには)けれど、先にも言った通り、鰐塚が好きだったのは破壊臣なのである。そしてそれは、今も健在なわけで。

 善吉がそれを見付けたのは偶然だった。自分だけしかいない生徒会室。床に落ちている定期入れ。写真。阿久根高貴。破壊臣。それを見下ろし、善吉は鰐塚の落とし物だろうなと容易く結論した。こんな回答、鰐塚を知っていれば誰でもわかるだろうが。きっと、大切に仕舞われている阿久根でさえも。
 善吉は定期入れを拾い、改めてまじまじと写真を見た。恐らく盗撮であろうそれには、確かに破壊臣だった阿久根が写し出されている。よくバレなかったなと善吉は鰐塚に感心した。なんせあの破壊臣を盗撮である。バレたら、カメラと共に自分自身を破壊される。自分なら死んでもしないな、善吉は一人頷く。
 それにしても、今の阿久根にほとほと心酔しているというのに、鰐塚はこの写真を定期入れに収めるほどにはまだ破壊臣が好きらしい。恨みがあるよりかはマシだし、可愛いらしい女子中学生の健気な行動だと思えばほほえましい。あの人は本当に。こんなにも女子中学生から愛されている阿久根を思い、善吉は口元を緩めた。

「あ、人吉せんぱい。私の定期入れを知りませんか?」
「これだろ?」
「それですそれです!いやぁ、すみません」
「大事なもんなんだから、気ぃつけろよ」
「はい!」
「……ところで鰐塚」
「はい?」
「他にも、破壊臣の写真ってあったりするか?」



こころなしかあたたかい
お題>花眠
/破壊臣好きな善吉妄想
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