「ねぇ、赤ちん、俺眠れないよ」
 駄々をこねる子供のように赤司の服を掴む紫原に、赤司はそうかそうかと微笑みながら紫色の髪の毛をすいた。しかし紫原はいつもならば喜ぶ赤司からのそれにも嫌々と首を振る。身体が大きな紫原の抵抗に赤司の身体が痛みそうだが、今だけは気に留めることも出来ないらしい。焦らす暇はないな、と赤司は紫原の症状を見極めた。そういえば、いつもよりも隈が濃い気がしなくもない。
「敦、わかった。寝よう」
「うん」
 紫原をベッドに誘導し、共に布団にくるまる。紫原は赤司の名前をずっと呼び、そのたびに赤司は返事をした。紫原の目尻に涙が溜まる。
「赤ちん、赤ちん、眠れないよ、眠いのに、眠れないよ、赤ちん」
「ああ、今、楽にしてやるからな」
 そう言うと、赤司は布団から出て、代わりに布団にくるまる紫原の上に跨がった。見下ろした紫原の顔は酷いものだった。顔色は悪く、隈はやはり濃く、いつも以上に目付きが鋭い。赤司はそんな紫原の頬を優しくなで、そしてその手を首へと持っていった。
「敦」
 合図のように名前を呼ぶ。紫原は目を閉じ、目尻から零れた涙が頬を濡らす。赤司は、その様子を眺めながら、そのまま首をゆっくりとゆっくりと絞めていく。平均的な大きさの赤司の手では紫原の首を余すことなく絞めるのは難しいが、それでも赤司は止めなかった。
 首を絞められ、紫原は閉じていた目を開け、自分の首を絞める赤司を見た。赤司は微笑んだままだった。喉仏を圧迫されて息が苦しい。涙が止まらない。視界が霞んでいく。目蓋が重たくなる。ゆらゆら。
「敦」
 首が絞められているせいで返事は出来ない。しかし赤司は咎めることもなく、緩めることもなく、首を絞め続けた。紫原の目蓋が閉じられる。ああ、眠るのかと赤司は息を吐いた。それでもまだ手を離さない。
「敦」
 最後に呼んだ名前に寝息以外の反応は帰ってこない。赤司はそこで手を離す。紫原から反応はない。どうやら深い眠りに入ったようだ。紫原から降りる。
「おやすみ、敦」



あぶくのように君は私を救います
お題>変身
/死んでない
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