念願叶ってようやく友達という存在を手に入れた宗像だったが、しかし急には人間には慣れないらしく、友達である善吉でさえもちゃんと接することが出来ない。
 善吉からすると、宗像は言うほど人間を怖がっているようには見えないが、宗像は常にその涼しげな顔の下でまたダメだったと反省しかしていない。実は宗像の日記にも善吉との会話からの反省しか書かれていないということもあるくらいだ。もちろん、善吉は知らない。
 宗像は反省し、どうにか改善しようと試みた。しかし今までの経験がそうさせてしまうのか、会話に沈黙が多くなってしまったり、近くにある人間の体温に殺してしまいたい恐怖を抱いてしまったりする。宗像は悩んだ。これではどうにも出来ない。そしてそこで、前に読んだ小説にあった「友達に相談する」を実行してみようと試みた。

 善吉に相談し終わり、いつもなら笑っている善吉が何やら真剣な顔で黙っているのを見て、宗像は相談をしなければ良かったと後悔した。いくら善吉が優しいからと、図々しく相談なんてして。嫌われたとしても仕方ない。嫌な想像ばかりが宗像の頭をめぐる。善吉が、ようやく口を開いた。
「ごめんなさい、宗像先輩」
 ああ、やっぱり嫌われた。善吉からの謝罪に宗像は胸が痛くなる。やはり自分に友達だなんて。
「宗像先輩が努力してたのに、気付けなくて、ごめんなさい」
「、え」
 嫌な想像ばかりをしていたせいで、一瞬理解が出来なかった。しかし善吉は申し訳なさそうな顔で宗像を見詰めている。
「そうですよね、そんなすぐに慣れませんよね。すいません、なんか、つい宗像先輩とみんなと同じように話してて」
「いや、人吉くんは、悪くないよ。悪いのは、」
 僕だ。そう言い前に、善吉がでも、と被せてきた。そこには、いつもの善吉がいた。
「もっと早く相談されたかっすよ、友達なんですから」
 友達、と善吉は宗像を笑って肯定してくれた。あ、嫌われてないんだと宗像は冷静に思った。そして、そうか友達かと、改めて友達の素晴らしさに心を打たれた。善吉が宗像の手を握る。
「んじゃ、まずは手でも繋いで人肌に慣れましょうか」
「……うん、ありがとう」
 繋いだ手の温もりに、殺したらどうしようかと思いながらも頬が緩む。だって、友達だから。



お友達入門
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