大丈夫かい、と優しく額を撫でられた。てがつめたい。うっすらと目を開けると、どことなく微笑んでいる阿久根先輩がいた。しかも俺はそんな阿久根先輩をいつも以上に見上げているようだった。俺の戸惑いに気付いたらしい阿久根先輩が額から手を離す。
「倒れたんだよ。しかも、少しだけ熱がある」
 熱。ああ、だから阿久根先輩の手が冷たいと感じたのか。そういえばなんとなくダルい。少しだけ霞む視界で阿久根先輩を見る。
「めだかさんたちは赤さんを呼びに行ってる」
 なんでもお見通しらしい阿久根先輩が安心させるように言い、また額を撫でてきた。少しぬるい。冷たい方が、良かった。いや、でも、ぬるいほうが人肌って感じがしていいのかもしれない。思考がうまくまとまらない。カッコ悪いな、俺。
「寝たければ寝ればいい」
 その言葉を耳にしたとたん、唐突に眠気がやってきた。確かに寝ていれば赤先輩の爪の痛さを感じずに済むのかもしれない。なら、寝たほうが。視界が黒くなる。阿久根先輩は最後まで微笑んでいた。
「おやすみ」



優しい日
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