家庭科の成績も何の問題もなく優秀な赤司は部活を休み、さらには家庭科部も休ませ家庭科室を占領していた。それもただ占領するだけではなく、シンプルな赤色のエプロンを制服の上から着て袖を捲り、ホールケーキを作っていた。机の上にはケーキを作るための材料が並べられており、中でも真っ赤なイチゴが多い。赤司は並べた材料を見渡し、ふむ、と一息吐いてから材料に手を伸ばした。
紫原は練習が終わったあとに家庭科室に来るようにと赤司に言われていたので、すぐさま家庭科室へ向かった。なぜ赤司は部活には出なかったのに自分が家庭科室まで行かなければいけないのだろうか、と紫原は思ったが、行かなければ怒られるのは目に見えているため、しぶしぶ行く。
ていうか、今日俺の誕生日なのに。朝に会った時からおめでとうを言ってくれず、いつも通りの赤司を思い出し、思わずため息を吐く。しかしいくら紫原が憂鬱になろうが歩けば家庭科室には着く。紫原は電気がついた家庭科室の扉を開けた。
「あ、赤ち、ん」
扉を開けると赤司が椅子に座って本を読んでいた。しかし今はそんな赤司よりも、紫原の目を引くものが机の上に鎮座していた。
「赤ちん、これ」
ふらふらと覚束ない足取りで赤司の正面に座り、机の上に鎮座している、真っ赤なイチゴが大量に乗ったホールケーキを指差した。そこでようやく、赤司が顔をあげた。
「前に、ショートケーキの上に大量にイチゴがあったら嬉しいと言っていただろう?」
その言葉に、紫原はそんなことを覚えていてくれたのかということと、赤司の言葉からどうやらこれが手作りらしいということに素直に驚いた。なんといったって赤司はあまり菓子などに興味がない。紫原はもう一度ケーキを見る。生クリームが見えないほどに真っ赤なイチゴが乗っていて、まるで赤司の髪の毛のようで美しい。
「赤ちん、あんがと」
「ああ、おめでとう、紫原」
ようやく赤司から聞きたかった言葉を聞け、紫原は無邪気に笑う。赤司も緩く口角を上げた。お誕生日おめでとう、紫原。
酸味がキツい
/紫原おめでとう!