高尾が躓いて転んだ。俺は突然のことに少し驚き、そして冷めていく思考で高尾が少し大きめの石に躓いたということに気づき、ため息を吐く。仮にも鷹の目と呼ばれているというのに。高尾が痛いと漏らしながら上体を起こす。大丈夫かと気休め程度に手を伸ばせば、高尾はすぐに起き上がり、何してんの!と怒鳴ってきた。
「見てわからんのか、お前に手を伸ばしてやっていたのだよ」
「だから、なんでそんなことすんの!」
「意味がわからないのだよ」
 高尾は、泣きそうな顔をして、泣きそうな声で言った。
「真ちゃんの手は俺に差し出すためにあるんじゃないんだよ。それに、もしこれで真ちゃんの手を俺が汚したり傷付けたりしたら、どうすんの」
 もっと大事にしてよ。高尾は俯き、俺に顔を見せないようにした。もしかしたら本当に泣いているのかもしれない。またため息を吐く。
「馬鹿かお前は。俺のこの手はそんなことで駄目になってしまうほどやわではない。だいたい、俺の手なのだから、自分で判断くらい出来る」
 高尾が顔を上げた。泣いてはいなかったが、おっかなびっくりした顔をしていた。情けない。いったいお前はどれだけ俺の手に執着しているのだよ。



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