赤司は将棋をたしなむ。しかも腕前はプロ級で、将棋を初めてから彼は負けたことがない。だから赤司は、将棋をしていても相手が次の一手を考えている間、とても暇だ。特に相手がもがけばもがくほど、暇だ。だから赤司は、今現在参加している将棋の大会が終わったあとのことを考えた。
 きっと俺は優勝するだろう。そして、賞状と優勝賞品である図書カードと老舗の和菓子屋が提供するどら焼きを一箱貰うのだろう。まだ中学生だから図書カードなのは仕方ないとしても、どら焼きは一箱もいらない。あ、ならば、紫原にあげてしまえばいい。
 ちらり、と赤司は相手を見た。しかし依然として相手は将棋盤を睨んでいるだけで、まだ打たない。赤司は思考を続けた。
 大会が終わって、知り合いなどと少し会話をして、それから紫原に電話を掛けよう。きっと寝ているであろう紫原は、少し不機嫌そうに電話に出るのだろうが、俺からだとわかるや否や、赤ちんだ! とはしゃぐに違いない。そして俺は静かにどら焼きが一箱分手に入ったことを伝え、取りに来いと言う。すると紫原はきっと、電話の向こうでバタバタと走りながらどこ? と訊ねる。俺はゆっくりと場所を伝え、そして電話を切り、紫原が来るのを待ち、やがてやって来る紫原に笑い掛ける。
「赤ちん、どら焼き、くれるの?」
 息も絶え絶えに訊ねる紫原に、笑いながら頷く。すると紫原は、ぱぁあ、と顔を綻ばせ、そして赤ちん大好き! と抱き着いてくるのだろう。ああ、可愛いなぁ。
 と、ここでぱち、と駒を打つ音が赤司の脳内にいた紫原を消した。可愛い可愛い紫原を。赤司は柄にもなく、苛立った。ので、相手を直ぐ様に王手をかけた。相手が泣きそうな顔をしたが、赤司は容赦しない。なんせ、脳内とは言え、紫原との楽しい会話を邪魔されたのだから。



馬も蹴らない犬は食べる
レス>紫原とのいちゃいちゃを妄想する赤司、ということでこういった形になりました〜。どうやって妄想させるか悩みましたが、小説3巻を読んでこうなりました。リクエストありがとうございました〜。
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