大ちゃんが日本に帰ってきたというので、仕事帰りに大ちゃんの家に行こうと思ったら大ちゃんからメールが来ていた。内容はただ一言「待ってる」それだけでわたしは今日一日を頑張ろうと袖を捲った。
 真っ直ぐ家に帰ると、合鍵を使ってわたしの家に入った大ちゃんがおかえりと出迎えてくれた。三ヶ月ぶりに会う大ちゃんは変わっていないようで変わっていて、でもわたしの家の景色に溶け込んでいて、思わず目眩を起こした。まるで大ちゃんとわたしが結婚しているみたい、だなんて。そんなありもしない錯覚を起こして、嫌気が差す。もちろん自分に。大ちゃんは返事をしないわたしを咎めず、飯出来たから食えよと我が物顔でリビングまで歩く。その背中が前よりも逞しくなったのを、わたしは見逃さなかった。
 大ちゃんのご飯は決まってチャーハンだ。何故ならわたしが大ちゃんの作る料理の中で一番好きだと言ったから。けど別にわたしは、大ちゃんがチャーハン以外のものを作ったとしても構わないのだ。言いはしないが。きっとわたしが何も言わない限り、大ちゃんはずっとわたしにチャーハンを作るだろう。大ちゃんは、わたしから何か言わないと、動いてはくれないから。
 チャーハンを食べ終わり、大ちゃんが誕生日プレゼントだと言って、どこかの国で買ったらしいネックレスをくれた。去年はブレスレットで、その前はカバンだった。わたしはネックレスを笑顔で受け取り、大ちゃんはわたしにいつ指輪をくれるのだろうかと思った。いったいなんのために、わたしが指輪だけを身につけないと思っているのだろうか。けれど、きっとこれもわたしが言わなければ大ちゃんは気付かないのだろう。わかってはいる。それでもわたしは、これだけは気付いてほしいから、また一年待ってみる。待つことにはもう慣れているから。



ただ待つ
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