桃太郎だよ、なんの感情も込めずに赤司は言った。俺はそれをちゃんと確かに聞いたが、意味がわからなかった。赤司はそんな俺をちゃんと理解しているのか、今度は教師のような口調で、僕は桃太郎なんだよ、と言った。ますます意味がわからない。頭がミックス。ぐちゃぐちゃする。赤司が桃太郎なわけがない。赤司は、どちらかと言うと、鬼だと思う。それもラスボスみたいな。
「鬼は、倒されるだろう?桃太郎に、倒されるだろう?悪は正義に、倒されるだろう?正義が正しいだろう?」
「そりゃあ」
「だからだよ」
 赤司はそこで笑った。はじめて見るような、やわらかな笑みだ。赤司は手を広げる。
「桃太郎は正しい。正義は正しい。僕は正しい。なぜ?だって、強いから」
 これは手がつけられない。素直に降参のポーズをとった。赤司が笑う。きっと悪に勝った正義というのはこういうふうなのだ。
 それにしても、確か俺は、紫原はなぜお前の言うことを聞くのかを訊ねたはずなのに。頭を掻き、もう一度訊ねてみる。赤司は当たり前のように言った。
「きびだんごがほしければ家来になれ、だよ」



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