最近有名な歌手のPVに出演するということで、撮影のために島に行った。しかも外国。だから海はもちろんのことながら、砂浜も空もきれいだ。俺の相手をする女優の子もスタッフさんもそのすべてに高揚し、そのせいか撮影は比較的にスムーズに終わった。撮影が終わり、一人きりになれる場所を探し、見付けたのはとてつもなく大きな岩が置かれた島の端から景色を眺める。不気味なくらいに真っ青な空に、その空をそのまま写したように澄んだ青い海。まだ夕日はないから、余計に青い。暴力みたいな強烈さ。この瞬間だけ、俺の世界は真っ青で、他の色なんてなくて、そして青だけが俺のすべてで。
 ふと、青峰っちに会いたくなった。青だから青峰っちを連想したのか、青峰っちが色黒だから連想したのか、とにかく青峰っちに会いたくなった。それと同時に、青峰っちとバスケがしたくなった。思い返してみれば、最近めっきりバスケをしなくなった。青峰っちに会うことはあるけど、バスケはしていなかった。バスケ、バスケ、したいなぁ。久々に、青峰っちと、一対一で、汗だくになりながら。
 身体の奥底が疼く。先程の撮影よりもよっぽど高揚する。別に撮影が嫌いなわけじゃないが、青峰っちとバスケと撮影なら、青峰っちとのバスケが好きなだけだ。早く、早く青峰っちに会いたい。青峰っちに会って、バスケをして、そんでくだらないこととかで笑ってたい。きっと青峰っちはバスケの話しかしないだろうけど。それでもいい。とにかく早く。
 どこかから俺を呼ぶ声がする。振り返れば、スタッフさんがこちらに向かっていた。どうやらご飯の時間らしい。そういえば夕飯はカレーだと言っていた。大声でスタッフさんにすぐ行くと返事をする。日が落ちる。あんなにも不気味なくらいに真っ青な空とその空をそのまま写したように澄んだ青い海にはうっすらと茜色。もう俺の世界は真っ青ではなくなった。それでも、青峰っちに会いたいという気持ちは消えない。
 確か、今はニューヨークにいるんだっけ?頭の中でこの間聞いた青峰っちの予定を取り出し、あとでちゃんと確認の電話をしようと心に決めた。あー、早く会いたい。



あの海はふしぎとあたたかく
お題>容赦
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テーマ「人外ファンタジー」
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