文化祭ということで普段は勝負が出来ない将棋部をはじめとした文化部に勝ってきた。部員一人に勝つたびに景品を貰える、と言われていたので貰ったが、やはり中学校の文化祭だからか、中身はお菓子の詰め合わせや図書カードばかりだ。正直言うといらないものばかりだ。しかしまぁ、図書カードは実用的だし、お菓子なら紫原にあげられる。というわけで、将棋部をはじめとした文化部に全勝してから紫原を探すことにした。本来ならば紫原のクラスに行けばいいのだろうが、なんせ紫原だ。恐らく模擬店のお菓子を食い漁るに違いない。だから紫原のクラスには行かず、校内を回る。

 クイズ大会だかなんだかで一層騒がしくなった校内をひたすら回ると、向こうから紫原がやってきた。マリー・アントワネットのような格好でクレープを夢中で食べながら。というかあれは紫原なのか?いや、この学校に紫色の髪の毛で巨体な人間なんて紫原しかいないだろう。ならばやはりあれは紫原だな。というわけで近寄る。
「紫原」
「あ、赤ちん」
 声をかけたことにより、ようやく紫原がこちらに気付く。近くによると迫力が凄まじい。こいつヒールとか穿いていないよな?いつも以上に紫原を見上げる。紫原はそんな俺を見下ろしながら、クレープを食べる。
「その格好、クラスの出し物か」
「うん、縁日だから〜」
 なぜ縁日だからマリー・アントワネットなのかはわからないが、そうか、と頷いておく。そして俺自身が意識を逸らすために、景品として貰ったお菓子の詰め合わせを紫原に突き出す。紫原の表情に輝きが出る。
「え、え、赤ちんこれどうしたの?」
「景品だ」
「へぇ〜、赤ちんすごいね〜。ありがとう!」
 クレープを持っていないほうの手がお菓子の詰め合わせを持ち、俺は手を離した。紫原は嬉しくてたまらないといった表情で俺を見下ろし、赤ちん大好きだし!と言った。巨体なマリー・アントワネットに大好きと言われるとは、なんともシュールだと思いつつ、俺はそうか、と頷いておいた。



大好きと言われたいならお菓子を貢げばいいじゃなぁい!
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