あの変人で有名な真ちゃんに彼女が出来た。たぶん高校で真ちゃんに出会ってから今までで一番驚いたのだろう。真ちゃんが不機嫌そうに眼鏡を直しながら、なんなのだよと呟く。いや、だって、ねぇ?真ちゃんだし?てか、なんで俺に出来なくて真ちゃんに出来んだろう。顔か?顔なのか?
「失礼なことを言うな、高尾」
「真ちゃん……」
「これもおは朝の導きなのだから」
「そこでもおは朝か!」
 恐るべしおは朝。てかおは朝の占いで彼女出来るとかどんだけ?え、おは朝って単なる情報番組だよね?……俺もおは朝見ようかな……。
「あーあ、真ちゃんはずっと俺とだらだら生きていくって思ってたのに」
「馬鹿なことを言うな」


 という会話をしたのが確か1年前だった。ただ今真ちゃんは呑みに呑みまくって潰れている。俺はと言えば、酔い潰れた195センチメートルの男をどうやって運ぼうかと悩んでいた。運ぶと言っても、ここは俺の家なんだけど。でもさすがにこのままテーブルに突っ伏したまんま眠られても困るわけで。あと、少しくらい労ってやろうかな、とか。
 昨日、真ちゃんはおは朝に導かれて付き合った彼女と別れた。話を聞けば、向こうが「占いで貴方より相性のいい人がいるって」と言ったらしい。別れる理由までそれとは、とことん真ちゃんの彼女だなとその時は呑気に思った。だって真ちゃんが、いつもと変わらない顔で話すから。
 けど、酔い潰れる間際に、ふと真ちゃんが悲しげに漏らしたのだ。
「何がいけなかったのだよ」
 それは彼女に対してか、おは朝に対してか、それとも自分自身に対してか。それがなにかは俺にはわからない。だって真ちゃんだし。けど、仮にも友達が目の前で悲しげにそんなことを言ったら、誰だって労りたくなるってもんだろ?
「真ちゃんは悪くないよ。ただ、真ちゃんの運が悪かっただけだよ」
 酔い潰れた真ちゃんから返事はなく、代わりに寝息が聞こえてきた。あーもー、真ちゃん運ぶの大変なんだからね。



遠くにいったらだめですよ
お題>名前がない
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