正直な話、バスケ部の一軍になるまでお互いがお互いの存在を認識していなかった。まったく、というわけではなかったが。なんせ紫原はその身長が目立つし、黄瀬は周りの女子が目立つのだから。けれどもそれだけだった。黄瀬はバスケ部に入部しても紫原のことを知らなかったし、紫原も黄瀬が一軍に入ったと紹介されるまでは知らなかった。だって一度も困らなかったのだから。

 黄瀬がバスケ部の一軍に入ってから、クラスでの黄瀬の立ち位置が少しだけ変わった。それは本当に少しだけで、きっと誰も、当の本人も気付いていないほど。けれど、少しだけでも変わったことは確かだった。
 例えば何か二人組にならなければならない時やグループを作る時、黄瀬はごくごく自然に紫原と一緒になることが増えた。名前順でないのは確かだが、それでも誰も文句を言わない。クラスに存在する黄瀬ファンさえも文句を言わない。それほどにごくごく自然に、一緒になることが増えた。それほどにごくごく自然に一緒に会話をするようになった。だから誰もその変化に気付かない。黄瀬も、紫原も。むしろ二人は、人間的に少しだけ合わないだろうと思っていた。だからまさか、自分たちが一緒になる機会が増えているとは気付いていない。
 だから紫原はいつものように、黄瀬も含めてクラスメイトの顔をちゃんと覚えていないと言う。だから黄瀬はいつものように、紫っちと俺ってあんま仲良しじゃないっスよと言う。きっと二人は、ずっとずっとお互いを友達だと思うことはないのだろう。



うといやつだな
お題>女顔
/友達になりそうでなれない二人
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