試合中の眉間に皺を寄せた汗まみれの顔を見ていたら、自然と口から好きだ付き合ってくれとこぼれてしまった。ここで幸いだったのがこの試合がただの練習試合だったことだ。俺をガードしていた紫原は目をぐわっと開いて俺を見下ろしている。今にも人間を殺そうとする熊みたいだ。熊は可愛いよな。うんうんと頷けば、紫原がなんだお前と言った。その紫原の後ろでは「紫原と木吉がまた喧嘩だ!」だとかみんなが騒いでいる。
「なんだ、じゃないさ。告白だよ」
「それ、普通今言う?」
「無意識だったんだ」
 てへ、軽く笑えば紫原がむすりとした顔をする。おー可愛い。紫原って熊とかライオンとかに似てるよな。
「変な奴だし」
「そうか。で、返事は?」
「あとでお菓子買ってよ」
 ん?それはどういう意味だ?たくさんのハテナが頭の中を飛び交うなか、紫原が俺に背を向けた。試合は?
「早くお菓子買いに行くし」

 とりあえず試合を放棄しそうになった紫原をみんなで止め、試合が終わったらお菓子を買うと堅く約束をし、試合を再開。そして試合をしながら、小さくかつ手短に紫原に確認。オッケーってことか?紫原は黙れとだけ言った。つまりはオッケーか。

 試合が終わり、着替えたらここに集合と約束をし、更衣室に急ぐ。しかし、紫原と付き合えるという事実に嬉しさが滲み出ていたのか、日向になにがあったと聞かれたので素直に、紫原と付き合うことになったとだけ言った。途端に表情が固まったり悲鳴を上げるみんな。
「は!?お前、は!?な、んで紫原!?」
「いつ!いつ告白したの!?」
 肩をガクガク揺さぶられる。まったくお前らも思春期だなー、なんて言うとちげぇよ!と怒られた。
「だから、なんでお前紫原なんだよ?敵だっただろ?そんで、いつから?」
「なんでって……紫原って可愛いじゃないか。それで、ついさっきから付き合い出した」
「紫原が……可愛い……」
「ついさっき……って試合中……」
 肩から手を離され、また悲鳴を上げたりするみんなを放って着替えの続きをする。紫原が待っていたらどうしよう。それにしても付き合ってすぐにデートとは、意外と大胆な奴だ。
 日向が絶望的な眼差しを俺に向けた。
「木吉……お前ってやっぱり変人だな」



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お題>容赦
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