合鍵を使って敦の住む部屋に入り、靴を脱いで玄関に並べる。もちろん敦のデカイ靴の隣に、だ。そう、敦は今部屋にいる。そして僕が来たことを知らない。だって連絡してないし。でも罪悪感とかはない。敦と僕の仲だし。
 罪悪感とかはないので遠慮なく廊下を歩く。そして近付くにつれて強くなる甘いにおい。たぶん甘いもんでも作ってんだろうなと予想する。菓子への執着心が強すぎて菓子類だけなら敦はプロ並みの腕前になったから。これで料理もプロ並みになってしまったら嫁にでもしようかなと思ったところで、扉の前に着く。そこでも遠慮なく扉を開ける。甘い甘いにおいがする。リビングを抜け、キッチンにいる敦の後ろまで行く。僕があげた淡い赤紫色のエプロンを着用していて、思わず笑ってしまう。
「敦、来たよ」
 ぴく、と敦の肩が動き、ゆっくりと振り返ってようやく敦が僕を認識する。どうやら菓子に夢中で僕が侵入したことに気付かなかったらしい。危ない。
「赤ちん、いつ来たの?」
「さっきだよ」
「ふぅぅん」
 僕からフライパンに目線を戻した敦の腰の辺りを抱き、敦が何を作っているのか見る。体格差が体格差なので邪魔にはならない(別に悲しくはない)。フライパンにはよく見るホットケーキが焼かれていた。パッケージ通りなホットケーキが出来そうな感じだ。さすが僕の敦。
「赤ちんも食べる?」
 それより敦が食べたい。そう言いたかったが、菓子を目の前にした敦にはそういった雰囲気は望めないので普通に頷くだけにした。それに、ホットケーキを食べたあとにでもいいだろう。食後のいい運動だ。あ、でも敦にメープルシロップをかけたら良さそうだな。



スイーツ系紫原
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