なんとなく帰ってくるような予感が朝起きたときによぎったので、いつもより豪勢な食事にしようと思って慎重に食材を選んだ。あくまでも予感という、とてもあやふやなものなので、帰ってこない可能性がとても高い。それでも私は食材を選んだ。彼には好き嫌いはないので、好き勝手に選ぶ。もしも私のあやふやな予感が外れ、彼が帰ってけなければ、シャムを呼べばいい。私はシチューを作ろうとその時に決めた。
 自宅に戻り、ドアノブに手をかけたら扉が開いた。この家のセキュリティはほとんど完璧なので、泥棒の心配はない。むしろ、この家に私以外が入れるとしたら、それは合鍵を渡した人間だけだ。そして、彼もその中に入っている。まさか。そう思って、玄関を見れば、男物の靴が並んでいた。すぐに上がる。
「あ、おかえり、ヒューイ!」
「……おかえりはお前だろ」
 リビングには予想通りエルマーがいた。どうやら私が買い物に行ってすぐに来たらしく、テーブルにはすでに空の容器になったプリンが並んでいた。私は嬉しさを露にしないようにため息を吐き、シチューの材料が入った袋をキッチンに置き、エルマーが座るソファーに並んだ。エルマーはいつものように、にこにこと笑っていた。
「いつ帰ってきた?」
「さっき。いやー、死ぬかと思ったよ!」
 快活に笑い飛ばすところは何年経っても変わらない。私は彼のそういったところが好きだ。エルマーはヒューイも笑うような話をしてあげるよ!とプリンを開け、私に渡してきた。こういうところも、変わらない。
 そうして私は、ようやく嬉しさを露に笑った。



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