紫原は基本的に怠け者だ。自分からは進んで動く、ということはお菓子が絡まない限りまずない。だから紫原には自分に指示を出してくれる人間というのが必要だった。親代わりでいい。あれをしろと言われれば、面倒だがすることは出来る。一番は何もしないことだが。だからそんな紫原にとって、赤司という存在はまさにうってつけだった。なんせ彼は紫原に的確な指示しか出さない。動かなくてもいいときは動かなくてもいいと指示さえしてくれる。紫原はそんな赤司が大好きだった。
「紫原くんは、赤司くんに甘えすぎです」
 ある日の昼休み。黒子は話の流れで紫原にそう言った。しかし紫原は赤司に甘えている自覚があるせいか、不思議そうに首を傾げる。
「なんか悪い?」
「悪いですよ。だって、紫原くんが赤司くんに甘えすぎると赤司くんのためになりませんから」
 これには紫原は首を傾げるのを止めた。
「なんで?」
「赤司くんの時間が減りませんか?赤司くんだって人間ですし、ずっと誰かに指示を出すって疲れると思いますし」
 そこまで言われ、紫原はわなわなと肩を震わせた。怒りからではない。赤司の気持ちを考えなかった自分が情けなくて、肩を震わせている。黒子はあからさまにしょんぼりとした紫原を眺め、あららと他人事のような感想を漏らした。

 赤司は紫原が好きだ。特に、自分の指示をよく聞いてその通りに動いてくれるところが好きだ。そして自分に懐く姿は可愛いとさえ思っている。だから赤司は、まさか紫原が自分の言うことを聞かない日が来るとは思ってもいなかった。
 練習が始まってから、紫原が赤司の指示を聞かない。というか赤司の言葉を無視する。一応みんなに混じって練習はしているが、それでも赤司を含め、部員たちは何が起こったと心ここにあらずである。そしてここで、赤司から聞いてこいとアイコンタクトで命令された黄瀬が紫原の元へ向かった。
「紫っち〜、赤司っちと喧嘩でもしたっすか?」
「そんなんじゃねぇし」
「んじゃあ、なに?」
「……今日、黒ちんにあんま赤ちんに甘えちゃだめって言われたから……あんま甘えたら、赤ちんのためになんないからって」
 いやいや、甘えない方が赤司っちのためになんないから。そう叫びそうになるのを堪え、黄瀬はそうっすかとだけ言って直ぐ様に赤司のところまで走って一字一句間違えず報告した。赤司の表情が一気に変わる。
「健気だな……」
 黄瀬はその時の赤司の表情を忘れられないだろう。なんと言ってもあの赤司が、まるで産まれてきた我が子を愛でる父親のような顔をしたのだから。
 ちなみに、そのあと赤司が紫原の元へ行き、僕を甘やかしてはくれないかと言ってその場は収まった。赤司も紫原もにっこにこである。



そんな君だから
レス>反抗期な紫原、と言われてどうしたら紫原が赤司さまに逆らうかを考えたらこうなりました。甘く、なってますか、ね? 我が家の赤紫を好きと言っていただけてありがたいです!リクエストありがとうございました〜。
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