なぜか荒北は休日を新開の部屋のベッドで過ごしたがる。それが初めて露見した時、新開は自身の部屋かベッドには何か魅力があるのだろうかと思ったが、荒北以外の人間は別にそんなことなどなく、荒北だけはせこせこと新開の部屋のベッドへと入り浸る。そんな荒北に、新開はやがてもう何も思わなくなり、着々と休日に読む推理小説を増やしていった。
 今日も今日とて荒北は昼食を新開の部屋で摂り、そのままベッドへと潜り込んでいった。新開は荒北と自分が食べていたカップ麺のゴミを捨て、本棚からこの間買ったばかりの推理小説を取り出した。ベッドのほうを見れば、すっかり我が物顔で荒北が占領している。
「靖友、何時に起こしたらいい?」
「……5時」
 しゃがんで荒北の顔を間近で眺める。もう眠気で目どころか、荒北が纏う空気もとろんとしたものになっていた。新開はこの時の荒北のどうしようもない無防備さが好きだ。しかもそれが、自分の部屋で、自分にだけ向けられているというのだから、嬉しくて仕方ない。うっすら笑い、5時という時間を頭に刻みつつおやすみと言うと、荒北はとろとろと目蓋を閉じ、返事もせずに寝てしまった。しかし新開は特に気にせず、ただもう少しこのゆったりと静かで幸せな時間が続けばいいとありきたりなことを考えていた。



とろける幸福
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