言われたとき、最初は嫌味だと思った。しかし見下ろした時に目があったそれに嫌味などという感情はなく、緑間はゆっくりと瞬きをし、声も上げずに驚いた。そして次に、そもそも彼はそんな人間ではないかと思い出し、先ほど赤司に言われた言葉を反芻した。そういえばいつものように淡々としていた。
「そんなに羨ましいか」
 赤司がにこりと綺麗に笑った。緑間は赤司の笑顔が苦手なので、ふいと反らす。赤司の笑顔はまるで、機械のように見えてしまうから。
「羨ましいよ、俺はあまり、背が高くはないからね」
「低くはないだろう」
「それでもお前たちの中にいたら、低いよ」
 確かに、いつもつるむ面子を考えれば赤司は些か背が低すぎるように見える。しかし、自分を含め規格外な人間がいるのだから仕方がないと思う。というか、気にしているのならば、紫原や自分と並ばなければいい。そう緑間は考える。しかし赤司は、そうじゃないんだ、と首を振る。
「本音を言えば、背が高くなりたい訳じゃないんだ」
「じゃあ、どういう意味なのだよ」
「お前くらいの高さから景色を眺めたいだけなんだよ」
 赤司の言葉に、ああと緑間はようやく合点がいった。確かに赤司がどれだけ優れていようとも、こればかりはどうすることも出来ない。きっとこればかりは、赤司が椅子に乗っても紫原に持ち上げられてもダメなのだろう。
 緑間は眼鏡のブリッジを押し上げる。別に、こんなことで優越感に浸るような狭い男ではないのだ。



下手したら死ぬ
お題>舌
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