賢くない頭なりに赤也は自分が決して柳の隣に一生いていい人間ではないことを理解していた。恐らくそんなことを柳に言いでもすれば、あの静かな優しさで否定されることだろう。もしかしたらそんなことを言うなと怒られてしまうかもしれない。けれども赤也はやはり自分はそんな人間ではないことを痛いほど感じていた。
「赤也、帰るぞ」
 部活が終わると柳は当たり前のように赤也と帰路を共にしてくれる。赤也は純粋にそれが嬉しく、そして果たしてこれがいつまで続いてくれるのだろうかと指折り数えて虚しくなる。別に柳には赤也以外に好きな相手はいないし、赤也も同様だ。それでも赤也はこの関係に終わりが訪れてしまうことを嫌々ながらに悟っているし、もしかしたら柳もそうなのかもしれない。赤也は隣に立つ柳を見上げ、くだらない話をしながら、いつかこの人の手が自分の頭を撫でなくなるのだろうと、ふと思い立った。それから、果てしない焦燥感。
「柳先輩、頭撫でてほしいっす」
 話の流れをぶっち切って、慌てるように言う。しかし柳は特に嫌がる素振りも見せず、ただ「急だな」と笑って容易く赤也の頭を撫でた。柳の手付きは優しいのにしっかりしていて、赤也はそれがたまらなく好きだ。
「柳先輩、痛いっす」
「む、髪が絡んだか?」
 すまない、と手を引っ込めた柳に、赤也は痛いのは心臓だと告げそうになる口をきゅっと締める。それに言ったところで、赤也がずっと柳と一緒にいれるわけではないのだ。赤也は先程まで自分の頭を撫でてくれた手を無邪気を装って握りながら、そういえば痛いと居たいは似ているなと思った。



愛を死っている
お題>背骨
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