宇海が死んだ。ちなみに犯人は俺である。死因は撲殺。俺の右手に握られた返り血の着いた金属バッドが決定的な凶器であり、証拠だ。目撃者はいない。時刻は夜中の2時過ぎで、場所はベタだけど神主がいない神社の裏だったから、たぶんいないと思う。そうじゃなくとも宇海は悲鳴も呻きも何も上げずに死んだのだ。俺がバッドを見せた時も、俺がバッドを振り上げた時も、バッドが宇海の頭を強打した時も。宇海は遺言も俺への恨み言も言わずに死んだ。呆気なく死んでしまった。いやもしかしたら今はただ仮死状態なだけで宇海はまだ死んでいないかもしれない。でも俺は宇海を助けないからこのままいけば宇海は確実に死ぬ。ざまあみろ宇海。ただ死にゆく宇海を見下ろし、そんな感情しか湧かない。どうやら俺は宇海が死ぬことに対して悲しくもないらしい。それはきっと俺が宇海をちゃんと自分の手で殺したからだと思う。これが俺以外の他殺か自殺だったなら、俺は少なからず悔しかったと思う。今となってはわからないけれど。それにしてもこの金属バッド、どうしよう。このままだとあっという間に宇海を殺したことがバレてしまう。それはいけない。宇海を殺した程度で捕まるだなんて、そんな馬鹿げた話になりたくない。あー、こんな時に宇海が生きてたら、うまくアドバイスを聞けたのに。なにあっさり死んでんだよ。善人なら善人らしく自分を殺した人間を困らすなよ。結局お前は偽善者だな、宇海。うわ、これは笑うしかない。ははは、宇海零は偽善者だってこの世すべての人間に伝わっちまえ。宇海零は偽善者。宇海零は死ぬに相応しい男。宇海零は悪人。宇海零は、俺みたいな平々凡々な人間でも簡単にころりと殺せてしまう、ただの人間。



宇海零殺人事件
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