不規則な食事を摂っていることがルイジ吉田ことジーノに知れた。というかうっかりそんな話をしてしまった。別に達海はジーノにたかろうとか、ジーノに心配されたくてそんな話をしたわけではない。むしろ達海はそういったことに興味はないし、そんな話をするとしたら後藤にたかる時くらいだ。だから達海はジーノにうっかり話してしまった時も『あ、言っちゃった。ま、いっかどうせ』程度にしか思っていなかった。というか次の日には忘れていた。それに、相手はジーノだし。

 最近ジーノは朝になると達海に買ったパンを渡しにやって来る。しかも焼き立てパンである。達海は眠気眼を擦りながら、その焼き立て時にしか嗅げない匂いに誘われてのそのそ起き上がる。ジーノは達海の汚い部屋に眉をひそめながらも、達海がパンを受け取り、そのまま口に運ぶまでは決して出ることはなかった。二人に会話はない。そして達海がもそもそと焼き立てパンを食べ始めると、ジーノはさっさと部屋を出て、練習時間まではやって来ない。達海はジーノがなぜわざわざ自分に焼き立てパンを配達しに来るかを知らない。まさか自分が不規則な食事を摂っているという話をした後からなんて、もっと知らない。知らないが、ありがたく頂戴している。
「にしてもあいつ、いつになったら卵サンド持ってくんだろ」
 少しだけ不満はあるが。



飼い主はわんと鳴く
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