小野田くんには赤が似合うな!
 鳴子はまるで自分が誉められたようににっかりと笑い、赤い水玉模様のジャージを羽織った坂道を誉め称えた。そんな坂道は誉められたことに頬をうっすら赤くしながら、鳴子くんのほうが似合うよと笑った。そのいじらしさに鳴子は心を打たれつつ、ならワイら二人とも赤が似合うっちゅうことやな! おそろや! と坂道と肩を組んだ。友達とお揃い、という言葉に坂道は蕩けそうな笑顔を浮かべていた。
 今泉は着替えながらちらりとその二人を眺め、鳴子は派手すぎるが確かに坂道にはその頬くらいの赤は似合うな、と思い、それから自分はあまり赤が似合わないことを思い出して少しムッとした。何にムッとしたのかは、わからないが。今泉は自分の専用ユニフォームを見る。赤みたいな派手さがない青が映る。それから、今泉は真っ青な空の下で懸命に走る坂道を思い出す。
「小野田には、青が似合う」
 完全な独り言だった。しかしここには鳴子と坂道がいて、それはしっかりと二人の耳にも届いていて。
「なんやスカシ! いちゃもんつける気か!」
 案の定、鳴子がぎゃんぎゃんと今泉に吠えた。坂道と肩を組んだままなので坂道の身体はよろけ、鳴子の叫びに耳を痛そうにもしていた。何をやってるんだアホ。今泉は坂道のために鳴子を引き剥がす。鳴子の怒りが跳ね上がるのは簡単だった。
「なにすんねんスカシ! 小野田くんになにすんねん! ちゅうか小野田くんには赤が似合うねん!」
「お前の勝手に小野田を巻き込むな。あと、小野田には青が似合う」
 青が似合う、をここまで言うつもりはなかった。だがあまりにも鳴子が否定するものだから、ついカッとなってしまった。ちなみに引き剥がしたことについては今泉に非がないので黙ることにした。坂道がおろおろと鳴子と今泉を交互に見るが、一向に収まる気配はない。
「なんやねん青て。お前の目は細すぎてこの赤くてかっこえぇ水玉が見えんのか?」
「別に赤が似合わないと言ってはいないだろう。ただ俺は小野田には青もよく似合うと思っただけだ」
 さりげなく鳴子の意見を卑下していない今泉の言葉に気付けたのは三人の中で坂道だけだった。言われた鳴子と言った今泉はそれどころで無いのか、気付いた様子が見られない。むしろ言い争いに拍車がかかっているくらいだ。坂道は一瞬だけ訪れた和みポイントから離れ、再びどうにか二人を止めようと試みた。それでも友達の優しさや、友達に似合うと言われた色のことのせいでちゃんと止めようという気力はすっかり削がれてしまっている。
 とりあえず、赤と青を合わせた紫はどうだろう。そう坂道が提案して、それは似合わない! と声を揃える二人が見られるまであと数秒。



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