一度は悪党でいることをやめた森田が再び戻ってきてから、銀王として恐れられている銀二は片時も森田から離れはしなかった。いわく、「また辞めると言われては困るから」森田を除く人間は、銀二がいかに森田に固執していたかを知っていたので何も言わなかった。そして森田も森田で、自分のしでかしたことの大きさに何も言わなかった。だから銀二はずっとずっと、何があっても森田から離れはしなかった。それこそまさにあの銀王が飼い主に忠誠を誓う飼い犬のように。こんな銀さん見たくない、と森田は思ったが、それでも何も言えない。森田には、トイレに行こうとするだけで無意識に腕を掴んでくる憧れの人を無下になど、出来ないのだ。こんなのどんな悪党にもできないし、こんなふうにさせる銀二はまさしく悪党であった。けれどそんな大悪党な銀二は、森田の自由に飛び立ててしまう翼がとても憎く、とても愛しく、そしてその翼を持つ森田こそがとんでもない悪党にしか映らなかった。この翼は、どれだけ自分を狂わせるのだろう。銀二はひっそりと、森田がもしまた辞めると言い出したら、自慢の牙で翼に噛みついてやろうと思った。



どっぷり泥沼
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