「カイジくんは本当に優しいね」
 そんなことありません俺なんてただのギャンブル中毒のクズでニートで人と会話もうまく出来なくてしかも馬鹿だからよく騙されるしていうかそれでどんだけ痛い目見てんだって話なのに全然懲りてないしあと口も悪いしお金大好きだしつうか本当に救われないくらいギャンブル中毒でいつも後悔ばっかしてるし何回も死にかけてるしなのに止めらんないのに指とか耳とか千切ったのに本当に俺なんて。
 カイジは泣く。いつも石田に、「カイジくんは本当に優しいね」と、あの優しい優しい笑顔で言われるたびに、ひっそりとこっそりとバレないように。目の前で泣かないのは、石田を困らせたくないから。だからカイジは石田の前では「何言ってんだよ」と呆れたり怒鳴る。本当はそんな立派な人間ではないのだと知らしめるために。
 けれど、石田はカイジの反論をいつも聞いているはずなのに、変わらず「カイジくんは本当に優しいね」と言ってしまう。止めてくれ、とカイジは願うが、届くことはない。カイジは無力なのだ。普通の人間よりも無力なのだ。耳を塞ぐことだって出来やしない。それどころか、たまにカイジの頭を撫でてくる石田の手を振り払うことさえも、出来やしない。
「カイジくん、俺は君に出会えて本当に良かった。君のような、優しくて強い人に」
 慈しむような眼差しに、射殺される。命を賭けたギャンブルよりもよほどタチが悪い。だって対抗する術が見付からない。カイジがどれだけ頭を使っても、どれだけ逆転できる運を持っていても。
「石田さん……」
 切なく漏れた名前。カイジは朝を迎えてまた泣く。いったいどうしたらカイジは夢に出てくる死人に勝てるのだろう。



翼をもいだエンジェル
×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -