忍足くんが羨ましいわぁと帰り道の途中で白石が言うものだから、謙也はピタリと歩くのを止め、なんでやと首を傾げた。白石はそんな謙也の隣で同じように止まり、にこりと笑う。憎たらしいほどに綺麗な笑顔だと謙也は舌を巻いた。
「やってな、忍足くんって謙也の従兄弟やん?」
「せやな。侑士は俺の従兄弟やな」
「で、従兄弟やから当然、謙也と血ぃ繋ごうてるやろ? 名字もおんなじやし、小さい頃とかもお互い知ってたりして、そんで他人やないんやろ?」
 他人、という単語に、謙也は一瞬だけ脳内にこれまでの忍足との思い出などを引っ張りだし、せやな、と頷いた。白石も、せやろ? とまるで初めから問題の答えがわかっていたような言い方をした。
「やから羨ましいねん」
 やから、を白石が使ったことにより、謙也は白石が何を言いたいのかがなんとなくわかった気がした。そしてそれが間違っていなければ、どうやら自分は彼に何かしらの不安を与えているということにもなり、とてもいたたまれなくなった。しかし罪悪感から発言をしたくなく、口を閉ざす。白石も何も言わず、やがて二人は合図もなく、揃って歩き出した。



呼吸すらお揃いにしたいの
お題>花眠
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