跡部はあれでなかなか宍戸のことを気に入っている。ただいかんせん跡部は宍戸のことを気に入っているくせに、態度を良くしようとか良好な関係を築こうとか、そんな気配がないせいで肝心の宍戸本人は跡部が自分を気に入っていると知ることもなく、いつもくだらない口喧嘩ばかりする。だが宍戸以外のレギュラーメンバーにしてみれば、宍戸が羨ましくて仕方ないのだ。
 だって氷帝では宍戸だけしか、跡部と口喧嘩をしないのだ。
 別に跡部は神聖君子ではない。むしろちゃんとした付き合いがなければ、一般的な嫌な奴に分類されてしまう。しかし実際のところ、跡部を嫌う人間どころか跡部と争う人間など氷帝には例外を除けばいない。その例外こそが、宍戸である。宍戸だけが、跡部をちゃんと好きでいるにも関わらず、絶えず口喧嘩を繰り返しているのだ。
 他の生徒にはとうてい真似できない。いや、まだ馬鹿くらいならばレギュラーメンバーなら言える。だが、いくらなんでも死ねやぶっ殺すなどの汚い言葉を、あろうことかあの跡部に投げることだけは出来ないしやりたくもない。しかし宍戸は平気で言う。怒りに任せて、「てめー跡部ぶっ殺す!」と。
「てかさ、宍戸もいつ気付くんだろうな、跡部が宍戸の暴言を許してること」
「いやぁ、それはあれやで。跡部が宍戸を気に入っているっていうのを宍戸自身が気付かんかったら無理やろ」
「ていうかさ〜、宍戸も跡部のこと好きなんだからもっと素直になればいいのに〜」
 慈郎の一言に、忍足は肩をすかした。
「いやいや、あの2人はああやって言う合うのが楽しぃてしゃーないんやろ」



誰も食わない
/悪友的な宍戸と跡部
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テーマ「人外ファンタジー」
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