「君には些か、私自ら手を下さなければならないようだな」
 そう呟くと、ジミーは実に淡々とした手つきで椅子に拘束された蓮実の頬をペーパーナイフで撫でた。つぅ、と薄く開いた皮膚からは血が流れ、顎を伝ってポタリとズボンに染みを作る。蓮実は微かな痛みに耐えつつ、目玉だけを動かし、今すぐにでも目の前にいる余裕綽々な男を殺してやりたいと強く思った。だが、きっちりと手足を椅子に拘束されたこの身ではどうすることも出来ない。ジミーは色素の薄いグレイの目を細め、口元だけを微かに歪ませた。
「どうかしたのかい? ああ、きっと君のことだ。私のことを今すぐ殺そうと考えているんだろう。本当に、怖い」
 怖い、とジミーが口に出した瞬間、蓮実はこんなにも説得力のない怖いは初めてだと肩をすくめた。なんせ、ジミーの顔にも雰囲気にも、蓮実を怖がっているような部分が見当たらないのだ。つまり、これは蓮実がとても見下されているわけで。そこまで考えていると、再びペーパーナイフが撫でてきた。今度は鼻の頭だった。
「セイジ、今の君では私を殺すどころか触れることさえ不可能だ。何故ならば、君は敗者だからだ」
 鼻の頭から流れた血がそのまま唇にまで流れ、蓮実は久しぶりに自分の血を味わうことになった。別に血に興奮する性格でもないので、何とも思わないが、この血が目の前にいる忌々しい男によって流れたものだと思うとそれだけで許せなかった。そして、これを払拭するためにも、是非にもジミーの血しぶきを浴びなければと使命感に似たものを持つ。早く、早くこの男を殺したい。ジミーは自分への殺意に満ちた視線に、「随分と熱い視線だ、照れてしまうよ」と嘯きながら、蓮実の目へとペーパーナイフを向けた。



君に容赦はいらない
レス>リクエスト遅くなりすみません…。本当にコメントに甘える形になってしまって…あとあまりびーえるな感じにならなくてすみません。ジミー難しかったです。 私もハスミンは受けだなぁ、と思ってる一人なんで嬉しかったです!リクエストありがとうございました!
×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -