「俺謙也がおったらそれでええねん」
 帰り道の途中、唐突に親友から熱烈的な告白をされた。俺はいったい何が何やらわからんわ、と思いながらやたらとイケメンな白石の顔を見ると、白石の顔はどこか遠くを見てアンニュイな雰囲気を漂わせていた。しかも夕日で白石は橙色に染まっていて、いつも以上にかっこ良くて一瞬だけ見とれてしまった。だが白石の目がちらりと俺を捉えたことで、すぐに正気に戻る。
「ど、どないしてん、いきなり」
 しどろもどろになりながらも白石を見ると、白石はなぜか悲しげに笑って「なんや、急にそう思っただけや」と言った。だが俺はその言葉が嘘なんやとなんとなく思った。きっと白石は、ずっとずっと前から、そう思っていたのだ。でなければこんなにも大事なことを、白石がさらりと言えてしまうわけがない。伊達に3年の付き合いなのだ。嫌でも分かる。
「白石、ほんまに俺だけでえぇん?」
 俺が言うと、白石は驚いたように目を見開いて、それから嬉しそうに笑った。その笑顔に安心する。せや、イケメンはイケメンらしく笑っとったらええんや。
「んー、謙也以外なー。えと、まず家族は絶対おらなあかんやろ? あとは、あいつらがおったら、ずっと楽しいやろな」
「せやな。ああでも財前とかは、嫌や言うかもしれんな」
「そんなもん、いくらでも口説いたるわ」
「はは、白石に口説かれたら、さすがの財前も骨抜きやろな!」
 けたけたと笑うと、白石はまたもや悲しげに笑ってしまった。なんやねんお前、めっちゃ面倒くない?
「なぁ謙也」
「なんや」
「俺が口説いたら、謙也は骨抜きなる? 俺以外いらんよぅなる?」
 悲しげに笑って、深刻そうに言う白石にはもちろんいつものような余裕はなかった。あー、なんやねんお前。そんなんずるいやん。ちょっとイケメンやからって、ちょっと性格いいからって、調子乗んなや。頭の中では白石への文句が大量生産される。けれどこれらは俺がちゃんと口にしないと伝わらない。そう、伝えなければ。
「あんな、白石。まず自分な、それが人を口説く態度か?」
「……は?」
「は? やあらへんわ! そないなしょぼい顔で口説かれてもな、全然嬉しぃないっちゅーねん! 笑えや!」
「け、謙也……」
 段々と驚きから嬉しそうな顔をする白石に、少し恥ずかしくなる。というか俺のが面倒な奴な気がする。遠回りすぎるというか、なんというか。いやいやでも、やっぱり恥ずかしい! 白石が謙也、と俺を呼ぶ。見れば、鬱陶しいくらいにきれいでかっこいい笑顔だった。
「これならえぇ?」
「……せやな」
 気まずいながらも頷くと、白石は一気に抱き付いてきた。ぎゅうぎゅうと力が強くて、苦しい。けれど、そんなことよりもだいぶ前から白石に骨抜きにされていた俺には嬉しくてしかたなかった。
「俺ほんまに謙也がおったら幸せやわ!」
 あほか、そんなんおんなしやっちゅー話や!



きらきらまっさかり
お題>羽虫
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テーマ「人外ファンタジー」
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