いつも彼の行く世界はまぶしくって仕方がないのである。きらきらぴかぴか、ぎらぎらびかびか、これでもかというくらいに光り輝いていて、そのせいで熱くてたまらないのに、そこはとても静かだ。そこが静かなのはきっとその世界の中心、というか世界そのものである手塚を表しているからだ、と跡部は思っている。そしてそれこそが跡部を含めた様々な人間が手塚のテニスに惹かれる要因ではないかとも跡部は踏んでいた。
「ずるい」
 そう言いたくて、跡部は結局いつも口を閉じて、そして次に開くときには自信ありげな言葉を口にする。まるで自分と手塚は同格であると思っていると受け取れるような言葉を。けれど跡部は嫌というほどに、自分は一生手塚と同格になれないことを知っていた。いくらテニスが好きでも、いくら強くなっても、いくら歳を重ねても、跡部には手塚と同じ世界には行けない。手塚はそんなことも知らず、あっさりと跡部を置いてそこに行ってしまう。
「すぐに追いかける」
 そう、追いかける。追い付く、でも、追い抜く、でもない。追いかける、が跡部に相応しい言葉だ。今までだって追いかけていたのだ。これ以上に似合う言葉はない。それでも夢は見る。もしかしたら手を伸ばせば届くのではないかと。手塚と同じものを見て、感じることができるのではないかと。
 いっそ情けなく縋りつけたらいいのに。醜く嫉妬できたらいいのに。こくり、と跡部はそれを胃に流し込む。そんな王様はいらないからだ。胃がじくじくと痛む。ああこんなんだから連れていってはくれないのか、と跡部は薄く笑った。



瞼を伏せても、息を吐いても
お題>容赦
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