「うげぇ、ぐらぐらする!」
 緑間から勝手に借りた眼鏡をかけ、高尾は顔をしかめて叫んだ。その声を聞き、緑間は早く返せと急かす。眼鏡がないせいで遠くないのに高尾の顔がぼやけ見えない。だが高尾はそんな緑間に、あともうちょっとだけ、と言ってなかなか眼鏡を返さない。
「早く返すのだよ!」
「すげぇなこれ、頭痛い」
「高尾!」
 怒鳴る緑間を無視しながら眼鏡越しにその姿を見る。わー真ちゃんが少し歪んで見えるわー、と高尾は感心し、改めて己の視力の良さに感謝した。つき、と頭が痛い。高尾は再び顔をしかめ、あっさりと眼鏡を外した。
「ん、あんがと」
 なんでもないように渡す高尾に苛立った緑間は手を叩くように眼鏡を取り返した。そして数分ぶりに再会したクリアな視界に安堵する。そのクリアな視界で、高尾は軽く額を押さえ、まだちょっといてー、と訴えてきた。ふざけるな。
「ふん、自業自得なのだよ」
「そだけどよー。あー、眼鏡ちょー不便!」
 これだから視力がいい奴は。緑間は眉を寄せ、そういえば中学の時にも自分の眼鏡で遊ばれたことを思い出し、余計に腹が立った。まったく、眼鏡はおもちゃではないというのに! 憤慨する緑間に、高尾はどんまい真ちゃん! と笑った。どうやら頭痛は収まったようだ。
「どんまい、ではない。まったく、何が楽しんだか」
「えー、楽しいけどな」
 けたけた笑う高尾に、緑間はほういったい何が楽しいんだ、とその剣幕だけで語った。だが高尾はそれに怯むこともなく、むしろけたけたからげらげらと笑い声を変え、腹を押さえる。
「だってお前と同じ世界が見えんじゃん!」



ははあんバカだ
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