あのね、うまいパン屋があんだよ赤ちん。と帰り道に紫原が幼い子供のように目を爛々と輝かせて力説してきたので、赤司はそうか、と流すはずだった唇をいつの間にか行ってみようと動かしてしまっていた。赤司は自分に驚く。勝手に唇が動いたからではない。自分がいかに紫原に甘いのかを改めて自覚したからである。以前緑間がため息を吐いていたのも納得だ。
 だから赤司は紫原に先ほどの言葉を訂正しようとした。しかしそれよりも早く、紫原の手が赤司の手を引っ張る。早く行こう! と言う紫原に、赤司はもはや何も言えなかった。

 紫原が連れてきたパン屋はこじんまりとした、しかし外にまでパンのいい匂いが漂う店だった。恐らく紫原が連れてこなければ赤司はここを訪れることはなかったはずだ。そこでふと、赤司は紫原に訊ねてみた。
「紫原、お前は前からこの店を知っていたのか?」
「んーん、知らないよ?」
「じゃあ、どこから」
 会話を進めながら扉を開ける。店内は種類はあまりなかったが美味しそうなパンがたくさん並べられていた。ふぅん、と静かに見る赤司の隣では紫原がうまそーと歓喜の声をあげながらパンを選び出していた。
「赤ちん赤ちん!赤ちんなに食べる?」
「その前に紫原、お前はどこからこの店のことを知ったんだ?」
「えー、そんな大事?」
「大事だ」
「ふーん。えとねー、前にね、さっちんがパンくれてね、すげー美味しくて、さっちんに聞いたらここのだって言ってたよー?」
 赤司にちゃんと説明をしつつ、紫原の目線はチラチラとパンを見ていた。もちろん赤司はそのことに気付いていたので、説明が終わり次第、もういいぞと合図を出した。途端に紫原は再びパンを選び出す。そんな紫原を眺め、赤司は桃井に店を教えるなと言うべきか、それとも紫原の楽しげな顔に免じてありがとうと言うべきか、そのことを一瞬だけ考え、そして紫原と並んでパンを選び出した。



あまったるいね
レス>ほのぼの?あたたかい?な感じになってしまった赤司と紫原でした。ちょうど「うさぎパン」というほのぼの小説を読んだところだったのでパン出したらいいかなという気持ちがありました。す、すみません…。日記も拝見されてるというだけでもひえー!と恥ずかしくなるのに、そんなにも赤司と紫原のお話などにも感想下さって…嬉し恥ずかしいです。ありがとうございます。そしてリクエスト遅くてすみませんでした!リクエストありがとうございました!
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