水戸部は小金井がいないと困ることが多い。多いというよりかは人とコミュニケーションをとるとき限定なのだが、それにしても人とのコミュニケーションとはよほどのことがなければなくならないわけだし、だいたい水戸部はバスケ部という立派な部活に所属しているのだから必要不可欠だ。幸い小金井も同じバスケ部で、しかも部員たちが水戸部が喋られないことに対して常々不満に思っているような様子は見られないので今のところは何もない。
 しかし水戸部はたまに将来のことを考えたときに思う。いつまでも小金井に頼ってばかりでいいのだろうか。ずっとずっと小金井が自分と一緒にいてくれるかもわからないのに。もしも、小金井と離れたら自分はちゃんと生きていけるのだろうか。そのことを考えると、途方もなく水戸部は悲しくなった。

 学校では進路調査が行われた。まだ受験生ではないにしても、そろそろ視野に入れなければならなくない時期なため、教室の空気は少しひやりとしていた。もちろん、水戸部も将来のことを考え、ひやり、ではなくしょんぼりとしていた。だが、小金井だけは違っていた。
「みっとべー、お昼食おーぜ!」
 自分の席の前に座る小金井に、水戸部は小さく頷き、進路調査の紙を机に仕舞い、そして鞄から弁当を取り出す。小金井も水戸部の机に弁当を置き、弁当袋を開けながら「あれ?水戸部なんか元気ない?」と首を傾げた。その言葉に水戸部は顔を俯かせる。小金井は、水戸部と目を合わせる。
「なに?……あー、進路調査かぁ。そのことで悩んでんの?」
 こくり、と頷く水戸部に、小金井は「水戸部ってなんか将来したいこととかないの?」と訊ねながら弁当の蓋を開ける。水戸部は、特に、と伝える。小金井は水戸部の意思が伝わると、卵焼きを食べながらけろりと「じゃあさ、いまんとこは書かなくていいんじゃない?」と言った。
「んー?ちゃんと考えなくていいのかって?いや、だってさ、まだまだ時間はあんだよ?そんな焦んなくていいって」
 あっけらかんとした物言いに、水戸部は自分は小金井と離れたらとか考えているのに、とやるせない気持ちになった。だが、すごく真剣に将来のことを考えている小金井、というのがなかなか想像出来ない。水戸部はハンバーグを食べる小金井を見、とりあえず今は小金井と離れてしまういつかよりも一緒に弁当を食べれる今を大事にしようと思い、弁当の蓋を開けた。



大事なのは
レス>というわけで小金井と水戸部でした。なんだか真面目な話になってしまいましたが、まあ彼らも二年生だからなぁと思うと妥当なのかしらと考えたり。書くのが遅くてすみませんでした!リクエストありがとうございました!
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