高校を卒業し、別々の大学へ進学し、そしてさらに就職なんてすれば会うどころか連絡さえしなくなっていた。別に喧嘩をしたわけでもない。むしろ、大学に行っても頻繁に連絡を取ったり遊んでいたのだから。そして完全にそれが無くなったのは、いつのまにかだった。気付けば、数ヵ月、数年と連絡を取らなくなっていた。いや、無くなっていたのは別々の進路を辿るようになったころなのだから、今さら気付くのもおかしな話なのだが。
 テレビでバスケットボールに関連するバラエティー特有のゲームがされている。最近はとんとバスケットボールをしなくなり、昔のように人事は尽くせていないが、恐らく自分はまだあのシュートを打てるのだと思う。一応、毎日爪は研いでいる。癖のようなものだった。
 ダムダム、とドリブルの音がテレビからする。ボールの感触や汗の匂い、勝ちたいという熱気、突き刺さる敵意、それらすべてが瞼の裏を熱くさせる。そして、ドリブルに混じり、懐かしい声がした。
(真ちゃん、)
 久しぶりに聞いた声だった。もちろんこれは幻聴で、今この場には俺しかおらず、テレビにもいない。だが、確かに聞こえた。高校生の時のままで。いつも的確にパスを出してくれたかのように。
 携帯を手に取り、電話帳を開く。久しく触れていなかった名前を押し、携帯を耳に当てる。もしも番号が変わっていたら、などと考えている余裕はなかった。ただなんとなく、自分らしくなく、早くあいつの声を聞きたくなったのだ。
「はい」
 数回のコールの後、出た。そして、ああ、高尾だ、と思った。歳を取ったのがわかるというのに、先程の幻聴となんら変わりないと思った。
 さて、ところで高尾に電話をしてきた理由を聞かれたらなんと答えよう。まさかお前の幻聴を聞いたから、とは言えまい。ここはとりあえずは、今度俺が結婚することから伝えておこう。



君と会うための理由を探す
/企画提出文
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -