そちらは寒くはないですか。と書かれた紙を写した写真メールが届いた。しかもこれが黒子からならばまだしも、紫原からのメールだ。赤司は端から見れば無表情ながらも、頭の中では疑問符が飛び交っていた。昔から紫原が突拍子もない言動をしていたが、それでも。いったい、これはなんなんだ。
 紫原からのメールを受け、しばらく携帯を睨んでいただけだった赤司は、ひとまず紫原からの質問に答えるために返事を打つ。寒くはない。


 紫原がいつものように居眠りをしていると、夢の中に赤司が現れた。それもかつての、帝光中学の制服を着た赤司だ。紫原は自分もいつの間にやら同じ制服を着ているのを見、これは夢なのだと知った。けれども目覚めることはないらしい。赤司は言う。
「紫原、寒くないか」
 さらりといいのける赤司も、それを聞いた紫原も共に夏服だった。夢の中だが、寒いどころか暑いくらいだ。だから紫原は寒くないよと答えた。しかし赤司は、違う、と、首を振る。
「お前の心は、寒くないか」
 紫原は首を傾げた。心が寒い、とはどういった状態を指すのかがわからないからだ。けれど、やはり紫原には今のところ寒さなど感じはしないので、寒くないよと再度言った。
 そこで目が覚める。
 紫原は授業中ということなど忘れ、思わず教室を見渡し、赤司を探す。当然ながら、赤司はいない。夢の中で、夢だと自覚していたはずなのに。己の滑稽さに紫原は呆れ、ため息を吐く。こんなところにいるわけも、あんなふうに容易く話し掛けてくれるわけもないのに。
 夢の中での赤司の言葉を思い出す。紫原、寒くないか。なぜ赤司はあんなことを言ったのだろう。紫原は、赤司が赤司である限り寒くなどないのに。むしろ、赤司のほうが寒そうなのに。
 ノートに手紙を書くように、赤司に向けて寒くないかと問い掛ける。あとでメールすることを忘れないために。そして出来れば、赤司の心が寒くなどなければいい。



震える
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