何が悲しくて俺は真ちゃん抜きでこんな野郎と一緒にレンタルビデオを選んでいるのだろうか。というか俺は確か真ちゃんと店に来ていて、真ちゃんと俺とじゃ見るジャンルが違うから必然的に別行動になって、俺はドラマとかアニメが並んでるとこに行っただけだ。なのに、なぜだ。なぜお前がここにいる。
「高尾、君はこういったアニメが好きなのか?」
 頑張って存在を消そうとしていた俺に、赤司が話し掛けてくる。なぜだ。なぜお前がここにいんだよ。そしてなぜ俺に話し掛けてくる。緑間なら洋画コーナーにいるというのに。まさかこれこそが、真ちゃんがよく言う「運命なのだよ」なのだろうか。もしかしたら今朝のおは朝を見ていれば、回避出来たかもしれないのだろうか。冗談じゃない。
 俺は赤司からの会話のキャッチボールを無視する。そして赤司が今は帰省中で、明日家に泊まりに来る奴のために普段は見ないジャンルのビデオを探していることを、頭ん中から消去する。こうすればいずれは赤司もどっかに行くことだろう。なんなら、真ちゃんに会えばいい。
 だが、そんな俺のことなどお構い無しに赤司は話し掛けてくる。
「真太郎と共に見るのか」
「真太郎は苦手そうだな」
「真太郎は耳をすませばが好きなんだ」
 真太郎真太郎と、さりげなく俺の知らない真ちゃん情報までわざわざ教えてくれる赤司に、イラッとする。真ちゃんよくこんな奴と仲良くしてこれたな。さすがの俺も、ちょっと難しいぞ、これは。いや、でもここで耐えてこそ真ちゃんの相棒だ。耐えるのだよ、高尾! 頭の中で真ちゃんの真似をして、踏ん張る。真ちゃん俺頑張るよ!
「真太郎は恋愛ものが好んでいるのだが、あまり人には知られたくないみたいでな」
「なぁ、赤司ー。ちょっとさ、真ちゃん真ちゃんうるさいんだけど。なに?そんなに言うなら真ちゃんに会えば?」
 なんだか宮地先輩になった気分だ。俺は今、笑っているが怒っているのだろう。なんだか宮地先輩、いつもすんません、とここで謝っておく。赤司は俺がようやく返事をしたことや宮地先輩みたいになっているのを見て、少しだけきょとりとしていたが、やがていつもの堂々とした顔に戻り、当たり前のように一言。
「僕に負けて泣きまでした真太郎に会うだなんて、そんな気まずいことが出来るわけないだろう」
 じゃあ俺だったらいいのか。思わずそう訊きそうになり、止めておいた。訊いておいて頷かれたら、少なからずショックを受けそうだから。ちくしょう、さすがは真ちゃんに勝った男。格が(色んな意味で)違いすぎる。



格の違いを見せられてやる!
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -