炬燵がある部屋に紫原を招き入れると、紫原はコンビニのビニール袋をがさがさ言わせながらすぐに炬燵に入った。その様子を、まるで猫のようだと赤司は思った。寒いのが苦手で、気まぐれで、炬燵が好き。危うく笑いそうになるのを堪え、赤司も炬燵に入った。紫原の足がすぐにあたる。
 あまりにも大きな身体は赤司の家の炬燵では収まらないらしく、紫原は炬燵に入っているにも関わらず、寒いと漏らした。足や腕は炬燵の中だが、背中などが寒いらしい。赤司ならばこの炬燵で身体がすっぽりと収まるのでいまいち気持ちはわからないが、寒いと言われたら慌てる。
 運のいいことに、赤司が炬燵から出なくとも半纏が置かれていた。別に赤司は炬燵から出ても構わないのだが、紫原を見ていると出ないほうがいいような気がしたのだ。赤司は半纏を掴み、紫原に渡す。サイズについてはこの際無視する。
 紫原は赤司から半纏を受け取り、なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになった。ごめん、と素直に謝るが、赤司は気にするなと本当に何とも思っていないような顔で、みかんを剥き始めた。その様子を見て、紫原はしずしずと半纏を肩に乗せ、そしてはたり、と、ビニール袋の存在を思い出す。
 ビニール袋は紫原の横にあった。
「あ、赤ちん、こ、れ……」
 急いでビニール袋を赤司に手渡す。しかし紫原の顔色はよくない。赤司はどうしたと訊ねる。紫原は、ごめんとまた謝っていた。
「何を謝る」
「うー……これ、赤ちん誕生日だから買ってたやつ……」
 がさり、ビニール袋を渡され、赤司は中身を見た。中には汗をかいた小さなカップアイスが入っていた。蓋にはショートケーキ味と書かれている。どうやら紫原は、アイスが溶けてしまったと考えたらしい。そんなこと、気にしないのに。アイスなんて、また冷やせばいいのに。
「ありがとう、紫原」
 プレゼントに大切なのは、渡したときに相手に気持ちが伝わるかどうかだと赤司は考えている。プレゼント自体はなんでもいい。ただ、プレゼントを貰う側があげる側の気持ちを汲めれば、それでいいのだ。そして赤司には、紫原がきちんと自分のことを想ってくれたことが十分に伝わった。だから、礼を言った。紫原はまだ不安そうに赤司を見ている。
 安心させるように、赤司は笑って見せた。
「嬉しいよ、紫原」
 その気持ちが。



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