未来が視えてしまう目を持ったと赤司が最初に言ったとき、紫原はふぅんとお菓子を食べながら流した。他のメンバーは驚いていた中で、ただ紫原だけがどうでも良さそうにしていた。赤司はそんな紫原が印象に残っていた。

「生きてて楽しい?」
 紫原はよく、突如として意味のない、延いては理解しがたい質問をする。だがそれこそが紫原だと割り切っている赤司は、その質問に対し、淀みなく答えた。
「まだ14年しか生きていないから分からないな。だが、今のところは順調に、健やかに人生を送れているから、幸せではあるんだろう」
「んー?楽しくないの?」
「楽しくないと言えば嘘になるが、楽しいと言うのも嘘になるな」
「なにそれ〜。赤ちん意味わかんねぇし」
 拗ねる紫原に、曖昧に微笑んで謝る。恐らくここに緑間がいれば、紫原に何かしら言うのだろうとは考えてしまうが。
「それより、いきなりどうした?」
「なにが?」
「質問の意味だ」
 微笑むのを止める。紫原はあー、と頭を掻き、気だるげに鞄からお菓子を取り出した。
「だってさ〜、赤ちんって強いじゃん。しかもさ、未来とかも視えちゃうんでしょ?だから、そんなんで生きてて楽しいのかな〜って」
 バリッ、勢いよく袋が開けられ、ポテトチップスの匂いがした。赤司は心底怠そうにしている紫原を見ながら、もしかしたら自分が未来を視ることが出来ると言った日からこいつはそんなことを考えていたのかと想像し、すぐに首を振った。きっと、紫原の気まぐれに違いない。
 紫原は赤司がそんなことを考えているとは思っていないのか、自分を見る赤司がポテトチップスを欲していると勘違いし、いる? と袋を差し出した。赤司はいや、と丁重に断り、代わりに紫原に訊いた。
「生きていて楽しいか?」
 バリボリと歯で砕く音がする。紫原は飲み込むまでの間に首を傾げ、そして飲み込んでから、答えた。
「そんなん、知らねーし」



そりゃあ貴方はねぇ
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